自営業者やフリーランス、経営者の方が毎年行うものに確定申告があります。
前年の収入を申告したうえで所得税・法人税を払うのが一般的です。
しかし申告でごまかした場合は、法的なペナルティーが科せられます。特にペナルティーで一番重いのが重加算税です。
確定申告する以上は、重加算税を回避する方法をぜひ知っておくべきでしょう。
重加算税が適用される要件とは
重加算税は普通に確定申告をしていれば課税されることはありません。
そのため「自分は大丈夫」と高をくくりがちになるでしょう。しかし万一に備えて、重加算税の適用条件は知っておいた方が良いです。
重加算税の適用条件としては、以下のようなものが挙げられます。
確定申告で意図的にごまかしを行った
重加算税は確定申告の際の意図的なごまかしが発覚することで適用されるものです。
つまり、きちんと申告すべき年収や経費を隠蔽・仮装することが条件となってきます。
例えば事業収入以外に、給付金による雑所得があったにもかかわらず申告しなかった例などです。
また、業務とは一切関係ない旅行費用を経費申告した場合も当てはまります。
なおうっかり申告し忘れていた場合は、重加算税の対象とはなりません。
税務調査で発覚することが多い
そして重加算税が適用されるタイミングは、主に税務調査の際です。
税務調査は確定申告時すぐではなく、その数年後に行われます。
これは税務署側も確定申告書類を確認するのにかなりの時間を要するためです。
そして申告書類で疑問がある場合に税務調査が行われ、事業主は調査官の質問に答えます。
もし調査の中で意図的なごまかしが発覚した場合、重加算税の適用対象となる流れです。
重加算税と脱税の違いとは
重加算税が申告上のペナルティーであると聞くと、まるで脱税したようにも聞こえます。
しかし実は、重加算税と脱税は性格のまったく異なったものです。
重加算税と脱税は、以下のように異なっています。
重加算税は刑法のペナルティーではない
まず重加算税は脱税と異なり、刑法上のペナルティーではありません。
このため重加算税を課税されたとしても刑事罰ではないため、前科が付かないものです。
加えて刑事罰ではないために、重加算税を理由にした懲役も発生しません。
脱税は懲役も伴う重い刑事罰
一方脱税の場合は、重加算税とは異なり懲役も伴う刑事罰です。
具体的には懲役5年以下または500万円以下の罰金という、極めて重い内容となっています。
たとえ刑務所に収監されなくとも重い出費が待っているため、甘いものではありません。
加えてこちらは刑事罰のため、前科もつきます。前科がつくと信用も落ちるため、極めて大きな悪影響を蒙るでしょう。
重加算税の計算方法とは?
重加算税は意図的に隠ぺいなどを行った場合に加算されるだけに、税率も高めです。
重加算税の恐ろしさを感じるためにも、その計算方法を知っておくのがおすすめでしょう。
重加算税の税率や計算方法は、以下のようになっています。
税率は35%または40%
まず重加算税の税率は、35%または40%です。低めに見積もっても高い税率といえるでしょう。
税率が2種類あるのは、年収や税額を少なめに申告した場合と無申告の場合で分けるためです。
少なめに申告した場合は過少申告加算税や不納付加算税の扱いで、35%の税率が適用されます。
一方無申告の場合は、確定申告をも怠った分悪質とみなされるため、より高い40%の税率です。
本来の税金とは別に課税される
重加算税は「加算」とつく以上、本来納めるべき税金とは別に課税されます。
例えば所得税の税額が10万円で申告書を提出している場合の重加算税は3万5千円です。なお無申告の場合は4万円が課税されます。
そして重加算税が課税された場合、速やかに一括納付するべきです。本来払うべき税金を滞納している扱いになっています。
ただ重加算税が発生した場合は、延滞税は発生しません。
課税以外にもデメリット
税率や税額の面で負担の大きいのが重加算税の特徴です。しかも重加算税がもたらすデメリットは、金額面の負担の大きさだけではありません。
実は重加算税が適用された場合、ほかにもいくつかの悪影響を蒙ることになります。
税務署からマークされやすくなる
まず一度重加算税の対象に該当した場合、税務署からマークされやすいです。
重加算税はわざと税額を少なめに見積もるなどして発生します。このため、税務署からも悪質な事業者とみなされやすいです。
このため税務調査が入りやすくなり、その調査期間も最長7年にまで延長されます。
いわば怪しい事業主と目を付けられやすくなるのが、重加算税の怖いところの1つです。
銀行から資金調達しづらくなる
ほかにも銀行など金融機関から資金調達しづらくなります。
これは金融機関が重加算税が適用された事業主の信用格付けを下げるためです。
信用格付けが低くなれば貸し付けのハードルが高くなり、運営にも支障をきたすでしょう。
なお金融機関が重加算税で信用格付けを下げるのは、重加算税課税の情報が伝わった場合です。
ただ重加算税による信用低下の影響は甚大であるため、やはり重加算税は回避すべきでしょう。
重加算税を回避するには?
ここまで見てきたように、重加算税による悪影響は非常に大きいです。
それでは重加算税を回避するには、どのような方法があるのでしょうか。
重加算税を回避する有効な方法として、以下の3つが挙げられます。
真面目に確定申告する
重加算税を回避する最大の予防策は、やはり真面目に確定申告することです。
所得や経費の金額を計算したうえで、間違いがないことを確認し申告書を提出するに尽きます。
もし可能であれば、なるべく余裕を持って計上作業を進めるべきです。
ギリギリに申告準備を行うと、焦りのあまりごまかそうとしてしまうことがあります。
申告に誤りがあった時点で修正申告する
確定申告が終わった後に内容の誤りがあった場合、速やかに修正申告することが大切です。
特に所得や税金の金額を低く申告していた場合は、なるべく修正します。
修正が必要な事実を知りながら放置すると、意図的として重加算税の対象になりかねません。
このため間違いに気づいたら早めに手を打つようにします。
なお早めに修正申告すれば、重加算税など追徴課税は免れるでしょう。
指摘された点はしっかりと反論する
仮に税務調査が入った場合でも、あきらめる必要はありません。
むしろ指摘された点について説明が付くようであれば、しっかり反論するべきです。
税務調査での聞き取りの時点では重加算税は発生しません。
このため帳簿などデータを用いてきちんと説明すれば、重加算税を免れられます。
重加算税以外の追徴課税とは?
重加算税は追徴課税に分類されるものです。そして事業主として税金とうまく付き合うには、他の追徴課税も知っておくと良いでしょう。
重加算税以外にも、4種類の追徴課税が存在します。
過少申告加算税
まず過少申告加算税は、本来計上すべき所得を含まずに申告したことに対するペナルティーです。過失で所得を含めなかった場合に適用されます。
税率はケースによってさまざまで、5~15%です。
なお税務調査の通知前に自ら修正申告を行った場合は発生しません。
無申告加算税
無申告加算税は、期限後に確定申告した場合や申告を忘れていた場合に課せられるものです。
税率はケースにより5~20%となっています。ただし過去5年で過少申告加算税や重加算税が発生した場合は25%または35%です。
税務調査の通知前に申告した場合は、課税されません。
不納付加算税
不納付加算税は、源泉徴収税の納付を怠った場合に発生する追徴課税です。
税務署の指摘で払う場合は10%、期限後に自主的に支払った場合は5%となっています。
なお源泉徴収税の納付期限を1日でも過ぎると発生するものです。
延滞税
延滞税は所得税などの納付期限を過ぎた場合に発生します。
税率は納付期限から2ヶ月までが7.3%、それ以降は14.6%です。
ただし修正申告を提出した場合は、提出日から2ヶ月間は7.3%となります。
まとめ
確定申告で注意したい重加算税を回避する方法について見てきました。
刑事罰ではないにしても、その税率は非常に高く大きな負担になりかねません。
また税負担以外にも、税務署に目を付けられるなどのデメリットもあります。
このため普段から真面目に確定申告したり、修正すべき点は修正申告することが大切です。
重加算税を回避するには、日頃からまめな帳簿チェックや計上が欠かせないといえるでしょう。