周囲を海に囲まれた日本では、水産物の密漁が課題となっています。
しかし個人単位での釣りや潮干狩りなども、ルールを守らなければ密漁として罰せられることがあるのです。
この記事では密漁の定義や関連する決まり、罰則などに関して解説します。密漁の防止策として参考にしてみてください。
密漁とは
密漁の判定は、水産庁や地域ごとの漁協が定めるいくつかの規則に則って行われます。
一言で定義するのは難しい犯罪ですが、主に3つの観点を判断の基準にするとよいでしょう。
無許可で水産資源による利益を得ること
利益の有無は密漁であるかどうかを判断する基準として重要視されています。
なぜなら利益を目的とした漁業には免許や許可が必要だからです。
釣りや潮干狩りは、個人単位で消費されるからこそ比較的自由に行えるのです。
獲った魚を許可なく販売することは違法ですし、その水産物を使った料理などで利益を得ることもいけません。
禁漁期間や区域などを破ること
漁協によっては水産資源を守るために、禁漁期間や禁漁区域を定めています。
該当する期間と区域では、例えレジャー目的であっても水産資源を漁獲することは許されません。
また期間や区域だけでなく、レジャー目的の遊漁における漁法も定められています。指定外の漁法は密漁にあたります。
都道府県漁業調整規則が基準となり、地域によって決まりが異なるので注意しましょう。
水産庁:都道府県漁業調整規則で定められている遊漁で使用できる漁具・漁法(海面のみ)
漁業権を侵すこと
漁協や漁業を生業とする人には漁業権というものが与えられています。漁業権は国の定める法律に基づいた権利です。
海域や水産資源の種類など、いくつかの項目に関して規則が設けられています。
漁業権を侵害したとみなされた場合も、密漁として処罰の対象になるのです。
漁業権とは
漁業権は利益目的の漁業をする権利として、漁協や漁師に付与されます。
大きく定置漁業権・区画漁業権・共同漁業権の3分野があります。
簡単にいえば、漁業における漁法・海域・漁獲物を一定の範囲で許可する権利です。
ここからはそれぞれの権利について解説しますが、遊漁の場合に注意したいのが共同漁業権です。
定置漁業権と区画漁業権
定置漁業権とは一定の場所で大型漁法による漁をする権利です。
この権利を保有していれば、定置網などの大規模な仕掛けを使った漁法が可能になります。
一方、区画漁業権は養殖を対象とした権利です。区画漁業権によって、一定の区域内での養殖業ができます。
しかしこれらの権利は大規模な施設を必要とするため、漁師でない限り権利の侵害は起こりにくいとされています。
共同漁業権
遊漁に深く関連するのが共同漁業権です。共同漁業権は地元漁師が一定の水域内で、共同で漁業を営む権利です。
その海域に生息する水産資源を利用する権利ともいえるでしょう。
沿岸域から数キロの範囲に設定されており、漁法や生物によってさらに5種類に細分化されています。
特に密漁の被害が多発しているのが第一種共同漁業権です。
第一種共同漁業権
第一種共同漁業権では、沿岸部の浅瀬に生息する水産物を対象としています。
具体的にはナマコ・アワビ・サザエ・イセエビ・タコなどです。海藻類も対象になっています。
浅瀬は船などで漁に行かなくても簡単に資源を得ることができるため、密漁の対象となることが多いのです。
特にナマコやアワビなどは国内外で需要が高く、高値で取引されるため密漁による乱獲が問題視されています。
密漁に対する罰則
密漁に対する罰則は平成30年に厳罰化されました。
厳罰化の背景には、密漁によってナマコやアワビの乱獲被害が大きくなったことがあります。
ナマコ・アワビ・シラスウナギの密漁が発覚した場合は、最大3年以下の懲役又は3,000万円以下の罰金が課せられます。
3,000万円とは個人に対する罰金で最高の金額です。
また無許可での漁業は懲役3年以下又は300万円以下の罰金、漁業権の侵害は100万円以下の罰金が課せられます。
密漁による水産資源への影響
資源が減少する
水産資源は基本的に、減少しにくく半永久的に利用できる資源とされています。
なぜなら水産資源は漁獲や自然死亡で減少したとしても、産卵や成長によって数が保たれるためです。
漁協や漁師はこうした自然のメカニズムを崩さないよう、細心の注意を払って漁業を行っています。
しかし密漁は再生産の見込みがある資源までとりつくしてしまいます。それによって水産資源が減少してしまうのです。
水産資源が減少すると漁獲量が減り、価格の高騰が起こります。
価格の高騰によって、水産資源が平等に利用できなくなるという問題にも繋がりかねないのです。
生態系のバランスが崩れる
自然界では食物連鎖によって生態系のバランスが保たれています。
しかしある種の生物が密漁によって減少すると、その種を食べていた生き物も食糧が減って生存できなくなります。
反対に密漁の対象となった生物が主食としていた生き物は、食べられなくなることによって大量発生する可能性があるでしょう。
また食物連鎖の乱れや生態系のバランスが崩れることで、環境問題や漁獲量の大幅な変化にも繋がることが考えられます。
密漁を防止するには
密漁を防止するにはまず自分が密漁者にならないことが大切です。密漁は個人単位でも摘発されることがあります。
密漁を防ぐために、釣りや潮干狩りといった遊漁の際に注意すべきポイントをご紹介します。
禁漁事項を確認する
生物を獲ってはいけない種類や場所、期間は場所によって異なります。釣りに行く前に地域の遊漁規則を確認しておきましょう。
多くの漁場に共通するのは第一種共同漁業権に定める生物を無許可で獲ってはいけないという点です。
ナマコやアワビ、サザエなどは個人の食用であっても獲らない方が良いでしょう。
また漁場によっては禁漁期間や禁漁区域を設けている場合があります。こちらもチェックしておくと安心です。
遊漁券や許可を取る
河川の釣りでは多くの場合、遊漁券が必要とされています。禁止区域や禁漁期間の密漁対策として、自治体が発行するチケットです。
場所によっては定期的に遊漁券のチェックが入るところもあるので、必ず入手してから漁場に向かいましょう。
遊漁券は地域の釣具屋やコンビニでも買えます。
また遊漁券ではなく、許可を得なければならない場所もあるので注意が必要です。
自治体ごとの規則があるので、禁漁期間や禁漁区域と一緒に確認しておきましょう。
転売などは厳禁
利益目的の漁業は、免許がない限り密漁にあたります。釣りなどで獲れた水産資源を転売することはやめましょう。
また自分以外の人が個人で獲ったものを、転売したり料理で提供したりするのも違反行為です。
基本的に獲れたものは自分で処理するようにしましょう。一度にたくさん獲りすぎないのもポイントです。
稚魚は逃がす
水産資源の量を維持するという観点で、稚魚が釣れたら逃がすのがベターです。
稚魚はその後成長し、産卵を経て水産資源の増加に貢献します。
マダイやアユ、シラスウナギなど特定の水産物は獲ってもよい大きさが規則として定められているので注意が必要です。
食用としても成魚には劣る場合が多いので、稚魚は逃がすことをおすすめします。
貝類なども同様の理由で、サイズの小さいものは持ち帰らない方がよいでしょう。
密漁を見かけたら漁協に連絡
密漁は見つけづらいのが課題だといわれています。そこで自分の身の回りに密漁者がいたら、その地域の漁協に連絡しましょう。
遊漁であってもルールやマナーを守り、お互いが監視の目となることが密漁の防止や減少に繋がるのです。
密漁から水産資源を守ろう
水産資源は日本にとってとても重要な資源です。
密漁によって資源量や多様性が損なわれないよう、一人一人がルールを守らなければなりません。
水産資源を守るための規則と仕組みを知り、密漁を防ぎましょう。