皆さんは出し子という単語をご存知でしょうか?
この単語は振り込め詐欺に関わる役割を示すものであり、普通に生活していれば耳にする単語ではありません。
ただ、ちょっとしたきっかけで出し子になってしまう可能性は誰しもあり得るものです。
今回はそんな出し子の違法性や危険性を解説していきます。
特に若い世代やそんなお子さんを持つ人はチェックしてみてください。
出し子とは?
出し子とは振り込め詐欺における役割の一つを指します。
振り込め詐欺においてグループで犯罪をおこなう場合には以下の役割分担をすることがあります。
- 主犯格……振り込め詐欺の計画・指揮をおこなう人物
- かけ子……振り込め詐欺のターゲットに電話をかける役割
- 出し子……銀行に振り込まれた場合にその口座からお金を降ろす役割
- 受け子……ターゲットの家に直接お金を受け取りに行く役割
これらの役割の中で出し子が別枠として話題になるのは、出し子の役割を詐欺グループ以外の人物がおこなうことがあるからです。
出し子をやる人からすれば口座からお金を降ろすという作業だけで報酬を貰えるという簡単な仕事になります。
その結果、アルバイト感覚で学生や未成年が受けてしまう事態が発生しているのです。
出し子の違法性
ここでは若い世代が出し子にされる理由とその違法性を紹介していきます。
詐欺グループが外部の出し子を使うメリット
詐欺グループが外部の出し子を使う理由は主犯格の特定を避けられるというメリットがあります。
詐欺師の疑惑のある人物は警察も目を光らせていることもあり、安易に銀行へ行くことも詐欺師側にはリスクになり得る行為です。
対して学生や未成年は警察のマークから外れて、お金を降ろせる可能性があります。
ただ、実際には慣れない作業で怪しさが出たり、明らかな未成年が大金を取り出すことに違和感を覚えられたりするものです。
それでもリスクに晒されずお金を降ろせて、いざとなれば足切りできる出し子は詐欺グループ側の大きなメリットになっています。
出し子が問われる罪
出し子は違法行為であることは間違いないのですが、実は罪として問われるのは詐欺罪ではありません。
口座からお金を降ろす行為自体は被害者や銀行側を騙しているわけではないのです。
その代わりに銀行の占有下にあるお金を正当な権利なく引き出すことは、窃盗罪にあたります。
もしも銀行でお金を降ろす際に銀行員と話した場合は詐欺罪が成立することもありますが、人を騙さない限りは窃盗罪となるのです。
出し子の逮捕の実例
ここでは実際に出し子が逮捕された実例について紹介していきます。
2020年5月の事例
こちらは19歳の無職の少年が逮捕された事例です。
少年は出し子として銀行に来る際に一般客として紛れるためカレーの具材を入れた買い物袋を持って来ていました。
しかし、警察側が少年に職務質問をおこなったことで出し子が発覚したのです。
買い物袋を持つ行為は詐欺グループ側の指示によるもので、少年のスマートフォンにはそのメッセージが残っていました。
ただ、この手口が他でも数回使われたことで逆に警察の捜査の目印となり、複数人の出し子の特定に繋がったのです。
このように未成年でも出し子として動けるように指示を出されることもあります。
2018年11月の事例
こちらは出し子として詐欺グループに関わっていた親子3人が逮捕された事例です。
3人は騙し取ったお金を仲間に分配するために連携してお金を降ろし、コインロッカーに移動させることを繰り返していました。
家族ぐるみの例は珍しいですが、知り合いから誘われた事で詐欺グループに入ってしまうことは少なくないものです。
顔を見知っているせいで途中で抜け出すこともできず、ずっと詐欺に加担してしまう結果になります。
2018年10月の事例
こちらは出し子のグループリーダーの男が逮捕された事例です。
男は現金を騙し取った疑いで逮捕された後、自宅から大量の他人名義のクレジットカードが発見されました。
それから調べを進めるうちに男が数人の出し子のまとめ役であったことが判明したのです。
詐欺グループでは主犯格が全ての役割に指示を出しているわけではなく、役割ごとのリーダーを持つ組織もあります。
こうすることでより主犯格の特定を避けられるようになってしまうのです。
出し子として関わった場合の罰則
出し子として振り込め詐欺に関わった場合は、先に書いたように窃盗罪となるものです。
窃盗罪の罰則は以下の刑法第235条になります。
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=140AC0000000045#1013
出し子における量刑は被害額や被害者数、依頼主を詐欺グループとわかっていたか、初犯であるかなどの要素から判断されます。
この要素のうち被害額が大きかった場合には出し子であっても執行猶予を付けられず、初犯でも重い罪に問われるものです。
怪しいバイトの見分け方は?
最後に出し子がアルバイトとして募集される状況について見ていきます。
手口やリスクを覚えておけば出し子を含む怪しいバイトに巻き込まれずに済むものです。
募集の手口
近年はSNSを通じた闇バイトの募集が頻繁におこなわれています。
出し子もその一つであり、簡単な作業内容と一回のバイトとしては高い報酬が提示されるものです。
そんな如何にも怪しいバイトでもお金に困っている状況や興味本位で応募してしまう人もいます。
そして、応募して募集した人と相談している時には「そう簡単にバレない」というような言葉で流されてしまうのです。
身分証明書を提出することのリスク
闇バイトでは身分証明書の写しの提出を求められることがあります。
この行為自体は普通のバイトでも見られるものですが、闇バイトの場合は大きなリスクを伴うものです。
仮に出し子として一回加担してしまった時に、次の出し子としての作業を依頼されることがあります。
その際に断ろうとすると、身分証明書を晒すと脅されることがあるのです。
軽い気持ちで一度だけと思っても一度個人情報を握られると、望まない詐欺の加担させられてしまいます。
怪しいバイトに引っかからないためには
出し子を含む闇バイトは、たまたま目に入ったとしても自ら進んで調べなければ巻き込まれるものではありません。
手を出してしまうのは短時間で高報酬という条件に釣られてしまう場合がほとんどです。
なので、簡単に稼げるような書き方をしているSNS上のバイトの募集には相談しないようにしましょう。
バイトに応募する時はSNS上ではなく、一般のバイト募集サイト等で応募するのが安全面で一番です。
また、事前に身分証明書や個人情報を聞き出されそうになっても応じないようにしましょう。
少しでも情報を握られるとその後も怪しいバイトに関わり続けることになるので、全て無視するのが一番です。
まとめ
今回は出し子の違法性や危険性、巻き込まれないための注意点を見ていきました。
バイトの募集として提示されていても出し子は犯罪であり、刑罰を受けることになるものです。
また、一度関わってしまえばその後も出し子や他の詐欺に加担させられてしまう可能性もあります。
その後の人生を詐欺グループに支配されないためにも初めから出し子には関わらない意志を持っていきましょう。