会社などで働いていると、勤務先のお金や備品を預かる機会も非常に多いです。
一時的にせよ、自分の手元にあるとつい自分のものと錯覚する方もいるのでは。
しかし会社のお金や備品を自分のものにする行為は、業務上横領罪になりかねません。
業務上横領罪に手を出さないための方法を、業務上横領罪の内容などとともに見ていきます。
業務上横領罪の構成要件や刑罰とは
ニュースなどで時折耳にする「業務上横領罪」。会社のお金を横領して解雇された人がいるという話を聞いたことがある方もいるでしょう。
この業務上横領罪が成立する条件や、刑罰の内容はどのようなものなのでしょうか。
仕事中に預かったものを占有したときに成立
業務上横領罪は、仕事中に預かった金品を自分で占有した場合に成立します。
わかりやすい例が経理で会社のお金を計算する際、一部を自分のものにした場合です。
またお金以外にも、会社の備品であるボールペンなどを無断で持ち帰る行為も該当します。
これに加えて、意図的に自分のものにしているかどうかが重要です。
このため会社の備品がうっかりポケットの中に入っていた場合は該当しません。
懲役10年以下で罰金がないほど刑罰が重い
業務上横領罪については、刑法253条に適用される刑罰とともに触れられています。
そして刑罰の内容は懲役10年以下と長く、罰金刑はありません。
懲役のみの法定刑であるのは、業務上横領が会社などの信頼を裏切る行為とされるためです。
業務上横領で悪影響を蒙る範囲が大きくなりがちであるからこそ、刑罰も重めといえます。
なお業務上横領罪は親告罪です。このため会社からの訴えがある場合のみに加害者従業員の刑事責任が問われます。
ただし訴えられない場合でも、懲戒解雇になるケースは非常に多いです。
刑事・民事どちらの場合でも時効は長め
ちなみに業務上横領罪の時効も、刑事・民事どちらも長めに設定されています。具体的には刑事の場合で7年、民事の場合で20年です。
どちらにせよ、仕事上で横領に手を染めると、発覚の不安がずっと付きまといます。
余計な精神面のストレスを抱えない意味でも、横領に手を出すべきではありません。
業務上横領罪と類似する罪の違いについて
業務上横領罪には、非常に類似した罪もいくつかあります。主なものとして挙げられるのが、単純横領罪・遺失物等横領罪・背任罪・窃盗罪です。
単純横領罪
まず単純横領罪は、日常生活で他人の物を勝手に自分のものにした場合に成立します。
具体例を挙げると、友達から借りたマンガを勝手に自分のものにする行為などです。
また友達から返すように言われても、返そうとしないケースも該当します。
特に後者の例は面倒に感じてやってしまうことも含むため、注意が必要です。
ちなみに単純横領罪は、5年以下の懲役となっています。
遺失物等横領罪
遺失物等横領罪は、偶然拾うなどした他人の金品を占有することで成立する罪です。
例えば、歩道に落ちていた財布を勝手に自分のものにした場合が当てはまります。
遺失物等横領罪では、懲役1年以下または10万円以下の罰金か科料という刑罰です。
業務上横領罪よりは軽めであるものの、拾ったものは必ず警察などに届けるべきでしょう。
背任罪
業務上横領罪と極めてよく似ているものに背任罪があります。
背任罪は任されている業務の中で、意図的に会社などに損害を与える行為に対する罪状です。
業務で得た顧客の情報を流出させ、会社に多額の損害を与えたケースなどが該当します。
背任罪も業務上横領罪と同じく会社の信頼を裏切る行為です。このため、5年以下の懲役または50万円以下の罰金と重い刑罰が科されます。
窃盗罪
窃盗罪は他人の金品を勝手に、かつこっそり盗み自分のものにして成立するものです。
わかりやすい例では、万引きやスリ行為などが挙げられます。
なお窃盗罪の刑罰は、懲役10年以下または50万円以下の罰金です。法定刑の重さに関しては、業務上横領罪の場合に近いといえます。
少額や未遂・共犯でも逮捕されるケースとは
業務上横領罪では、基本的に横領の金額が高い場合に逮捕されることが多いです。
ただし金品が少額の場合や未遂の場合でも逮捕されることがあります。
まず横領した金額が少額でも、日頃から備品を私用していた場合です。
この場合は、会社の金品を日常的に自分のものとして扱う態度が見られます。
やり方が悪質で反省の色も見られないため、警察沙汰になることもあるでしょう。
また会社の就業規則に、横領禁止について明記されている場合も逮捕されます。
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