防犯設備士は公益社団法人の日本防犯設備協会が認定している民間資格です。
防犯設備に限らず、詐欺やサイバー犯罪についても幅広い知識を持つ「防犯の専門家」として活躍しています。
聞きなれない方も多いかと思いますが、防犯意識が高まっている今、注目されている資格の1つです。
ご自身の防犯環境を見直すきっかけにもなるため、取得して損はありません。
こちらの記事では防犯設備士について詳しく解説していきます。
防犯設備士になるためには
防犯設備士として働くには、認定試験に合格し、防犯設備士資格者証を申請・取得しなければなりません。
さらに、防犯設備士の認定試験を受けるためには試験前に養成講習を受ける必要もあるのです。
まずは防犯設備士の受験資格から講習・試験内容まで説明していきます。
受験資格
防犯設備士の認定試験を受けるためには、以下の2つの条件を満たす必要があります。
- 試験前日と当日、協会実施の防犯設備士養成講習を修了した方
- 事前提出レポートを提出した方
防犯・電気の基礎の講習は行われないため、事前提出レポートを通して自学が必要です。
また、上記の条件を満たしていても、以下に該当する方は受験資格はありません。
- 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から 3 年を経過しない者。
- 成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ない者
- 暴力団員又は暴力団員でなくなった日から 5 年を経過しない者
- アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒者
防犯に関わる資格ですので、上記のような方は取得できない資格となっています。
料金・申込方法
防犯設備士の資格取得には、2日間の養成講習の受講と認定試験の受験が必須です。
そのため、講習と試験それぞれに費用が発生します。受験料と受講料は以下の通りです。
日本防犯設備協会の会員・準会員の場合
受験料:11,000円 受講料:27,500円(テキスト代含む)
非会員の場合
受験料:11,000円 受講料:33,000円(テキスト代含む)
再受験する場合には、会員・準会員・非会員に関わらず、受験料11,000円だけで講習と試験が受けられます。
しかし、講習・試験を無断欠席してしまうと再受験料は適用されません。
申込は日本防犯設備協会の公式サイトから行えますが、インターネットが利用できない方はFAXでの申し込みも可能です。
提出期限は厳守しましょう。
講習・試験日程と内容
防犯設備士の養成講習と認定試験は年に4回実施されており、期間は2日間です。
2日間かけて受ける養成講習と2日目の認定試験は以下のスケジュールで進みます。
- 1日目 9:50~17:00(養成講習のみ)
- 2日目 9:50~12:30(養成講習)/13:30~17:00(認定試験)
養成講習では防犯機器の知識・施工・維持管理・設計に関する講習を受け、警察による講演もあります。
認定試験は試験A(25問/70分)・試験B(25問/80分)の2区分、6科目で実施され、解答はマークシート方式です。
防犯や電気の基礎、防犯機器の施工・維持管理・設計に関する問題が出題されます。
合格基準と難易度
防犯設備士認定試験の合格基準は、試験AとBそれぞれの正答率が60%以上であることです。
正確な合格率は公開されていませんが、受験者の声を参考にすると70%~80%の高確率で合格することができます。
実は、防犯設備士の過去問や市販の問題集は一切売られていません。
申込後に協会から送られてくるテキストが全てなので、それを読み込むことが大切です。
特に専門知識は余裕を持って勉強しておきましょう。
防犯設備士の上級資格とは
防犯設備士には上級資格があり、「総合防犯設備士」と呼ばれています。
2019年4月1日時点で、全国の防犯設備士が28,909名に対して、総合防犯設備士はわずか383名です。
総合防犯設備士は、総ての犯罪を考慮した防犯設備の施工・維持管理ができる能力が求められます。
加えて、監査や防犯設備士の育成をするための専門知識や判断力も必要です。
そのため、防犯設備士資格を取得してから3年以上、かつ資格の更新を3年以内に行っていることが受験条件です。
認定試験は1次試験と2次試験があり、2次試験は面接方式で行われます。
面接では実務実績も問われますので、防犯設備士としての経験を積んでおかなければなりません。
試験内容等の詳細は日本防犯設備協会の公式サイトで確認することができます。
参考:防犯設備士 試験のご案内(公益社団法人 日本防犯設備協会)
防犯設備士を取得するメリット
ここまで防犯設備士になるための方法を解説してきましたが、他の資格に比べると認知度はそれほど高くありません。
そのため、この資格を取得するメリットが気になる方も多いのではないでしょうか。
防犯設備士の資格は持っている人が比較的少ないため、以下のようなメリットが考えられます。
お客様から信頼してもらえる
警備会社や防犯カメラの販売など防犯システムに関わる職種の場合、「防犯のスペシャリスト」であることが信頼に繋がります。
防犯の知識を活かして、お客様に最適な防犯設備を提案することができるからです。
犯罪傾向や確かな知識に基づいた提案であれば、お客様も安心して防犯機器や防犯システムを利用することができるでしょう。
警察に協力する等、防犯強化に貢献できる
防犯設備士が警察からの要請を受けて行うのが、防犯診断や現場防犯といった活動です。
警察と共同で地域の防犯の見直し・補強をしたり、犯罪現場に出向き手口を調査して防犯指導を行います。
防犯設備士は、警察でも知らない知識を身に着けることができるので、社会の防犯強化に貢献できる貴重な存在なのです。
防犯設備士資格が活かせる職種
防犯設備士の資格は、取得後に以下のような職種で活かすことができます。
警備保障会社・防犯カメラ等の販売会社に勤務
防犯設備士資格を取得するメリットでも説明しましたが、防犯に携わる会社はお客様からの信用第一です。
最適な提案でお客様の信頼を得られるだけではなく、維持管理まで担当することができるので仕事の幅も広がります。
さらに、資格手当が支給される会社も多いので、収入面でも有利です。
防犯アドバイザー
その豊富な防犯知識と専門性を活かして、防犯アドバイザーとして活躍している人もいます。
企業や団体の防犯指導を担当し、防犯セミナーの講師を務める場合もあるようです。
警察官
犯罪を未然に防ぐのも警察官の重要な仕事なので、防犯の知識を役立てられます。
防犯設備士の資格は、犯罪が起きてしまった場合でも手口の分析や再発防止の指導に活かせる資格です。
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3年ごとに更新が必要な理由
防犯設備士の資格取得後は、3年ごとに免許の更新が必要になります。
その理由は、防犯設備士には年々変化する犯罪情勢に対応する能力が求められるからです。
資格取得に満足せず、日々新しい知識を取り入れ的確な対応ができるよう更新が義務付けられています。
手続きは年に2回実施されており、更新料は11,000円です。
更新には申請が必要で、申請後に「資格更新テキスト」「問題用紙」「解答用紙」が協会より発送されます。
更新を忘れてしまうと資格停止になりますので、注意しましょう!
まとめ
防犯設備士はまだまだ一般的な職業ではありません。その一方で、犯罪が多様化する社会でその専門性を活かせる仕事でもあります。
防犯設備士の資格を取得している人も比較的少ないので、希少性の高い資格と言えるでしょう。
さらに、防犯の知識はご自身の生活にも役立ち、犯罪から自分や家族の身を守ることにも繋がります。
しっかりと準備をすれば合格しやすい資格ですので、興味がある方はぜひ挑戦してみてください。