2000年代に入り、徐々に普及し始めた、現金の代わりにEdyやSuica等を利用しての決済。
スマートフォンの普及と共にその利用者数は飛躍的に伸び、今やpaypay等のアプリで決済ができるようになっています。
それらはいわゆる「電子マネー」と呼ばれるものです。
同時に、それに似たような通貨で「暗号資産」「仮想通貨」というものも耳にする事が多くなってきています。
その中でも特にビットコインは今や仮想通貨として誰でも知っている程の存在になっています。
しかし、そのビットコインが、実際にどのようなものなのかを分かっている人は、その認知度に反して多くないようです。
今回は、ビットコインに代表される暗号資産・仮想通貨とはどういったものなのかを分かりやすく解説していきます。
暗号資産とは?
そもそも暗号資産とは一体どのようなものなのでしょうか。
実は、暗号資産の仕組みを詳しく理解するには、ある程度専門的な知識が必要となり非常に難しいものです。
今回はそれらを出来るだけ簡略化し分かりやすく説明していきます。
まずは基本的な仕組み、そして仮想通貨との違いについて見ていきましょう。
暗号を用いたデジタル通貨
暗号資産とはその名の通り暗号を用いた通貨で英語ではcryptocurrencyと呼ばれます。
日常的に使用する、紙幣や硬貨とは異なり、物理的なモノがあるわけではなく暗号を用いて管理されます。
暗号資産とは簡単に言えば、ネット上で利用できるお金ということになります。
特にネット上での取引における送金に便利な通貨システムです。
仮想通貨との違いは?
実は仮想通貨と暗号資産は全く同じものです。
「ネット上の仮想の通貨」つまり実体のない通貨であるところからこのような名前が付けられたようです。
これは日本での呼称となっており英語圏では「cryptocurrency」つまり暗号資産と呼ぶのが一般的です。
電子マネーとの違い
「デジタルな通貨であれば電子マネーと同じではないか」と思われるかもしれません。
しかし実際は暗号資産は電子マネーとは似て非なるものです。
ここでは電子マネーと暗号資産の違いについて解説していきます。
基本的には電子マネーと同じ
暗号資産の基本的な概念は決済システムです。
プリペイドシステムは、事前に現金をEdyやSuica等にチャージして利用するものだというのはお分かりだと思います。
暗号資産も基本的には同じ考え方に基づいており、その意味では電子マネーと同じと言えます。
これが電子マネーと混合してしまう理由の一つと言えるでしょう。
暗号資産にはレートがある
電子マネーは、ただ単純に法定通貨をデジタル化したものです。
例えば、1,000円をEdy等にチャージすると同じ1,000円として利用できます。
ところが暗号資産はその通貨自体にレートがあり「円」や「ドル」のように通貨の単位があります。
レートというのは1ドルがいくらかということです。
1ドルの値段が日々変わるように暗号資産は為替のレートが生じます。
この点が電子マネーと大きく異なる部分と言えます。
ビットコインとは?
暗号資産には沢山の種類があります。そしてその中でも代表的なのがビットコインです。
特に日本人にも馴染みのビットコイン。そのビットコインについて詳しく見ていきます。
ビットコインとはどういったものなのか?そしてビットコインを通じて暗号資産の理解をより深めていきましょう。
誰が作ったのか?
ビットコインはサトシ・ナカモト (Satoshi Nakamoto)という研究者によって発明されたものとされています。
世界初の暗号資産として2009年に運用が開始され、仮想通貨の中でのシェアは2020年現在で70%と言われています。
単位はBTC
先述のようにビットコインは通貨として取引される為単位がありBTCで表されます。
為替レートと同じですので日々変動します。2020年1月現在では1BTC辺り約90万円で取引されています。
ビットコインと法定通貨との違い
ビットコインが、通貨としての位置づけである事はお分かりいただけたのではないでしょうか。
では、法定通貨とはどのように違うのでしょうか?
実物が無い
一番分かりやすい点としては法定通貨と違い実物が無い事です。
つまり法定通貨のように紙幣、硬貨では無い為財布に入れるお金ではないということです。
発行元が違う
世界の通貨は発行元が決まっており、各国の中央銀行と呼ばれる銀行の為の銀行がそれぞれの通貨を発行しています。
日本円であれば国家(日銀)が発行しています。
これに比べてビットコイン(その他暗号資産)は発行元が存在しません。
上限がある
極端に言えば、中央銀行が管理している法定通貨は発行量は無限です。
つまり日銀が管理している日本円は無限に発行できることになります(勿論、むやみやたらに発行はしません)。
それに対してビットコインは発行量が決まっており上限が2100万BTCと決まっています。
各国の中央銀行の主なミッションは通貨の流通量をコントロールすることです。
それを踏まえると、上限が決まっているというのは、法定通貨との大きな違いの一つとなります。
ブロックチェーンで管理されている
ビットコインと共に、ブロックチェーンというものを聞いた事があるのではないでしょうか。
ビットコインの理解を難しくしているものの一つですが、仮想通貨を語るうえでブロックチェーンを知る事は欠かせません。
ここからはブロックチェーンに関して、できるだけ簡潔に説明していきます。
中央銀行が管理しない通貨
先述のように法定通貨は中央銀行が管理します。
例えば、取引等支払いに対して銀行などの金融機関を利用します。つまり、それは銀行がお金を管理していることになります。
それに対してビットコイン等の仮想通貨のやり取りは銀行を介しません。つまり管理者(金融機関)がいないのです。
ビットコイン・ネットワークの参加者が管理
では誰が管理するのでしょうか?
ビットコインは「ビットコイン・ネットワーク」の参加者である個人が管理しています。
参加者それぞれが、ネットに記帳された記録を管理するのです。
そして、参加者1人を1つのブロックとして、これが繋がって、皆で管理しているのでブロックチェーンと呼ばれています。
つまりブロックチェーンとは国家(中央)が管理する法定通貨に対して非中央集権化された通貨の管理システムの事を指します。
コインは発掘される?
一般の参加者によって管理されているブロックチェーンですが、そもそもなぜ、それに参加するのでしょうか?
実は管理に参加する事でBTCをもらうことができるのです。
BTCは参加した管理者に送金処理が不正なものでないかチェックされます。
問題なければ参加者は送金処理をすることになりますが、処理ができるのは権利を得た参加者のみができるようになっています。
そこではゲームが行われており、参加者たちはこの権利を取得する為にそのゲームに勝利する必要があります。
そのゲームに勝利し、決済処理の権利を得て決済処理を行った参加者がBTCをもらえるのです。
これを「マイニング・採掘」と呼びます。
ビットコインは分裂する
法定通貨と違う点であげられるのが、仮想通貨は分裂するという事です。
コインが分裂すると聞いてもなかなかピンとこない方が多いのではないでしょうか。
当然ながら、コインが二つに割れることではありません(そもそも実体がない)。
では分裂するとはどういうことなのでしょうか?また、分裂するとどうなるのでしょうか?
ブロックチェーンが分裂する
ブロックチェーンのシステムに何らかの問題が発生する場合があります。
その際、ブロックチェーンは問題を修復しようとアップデートします。これをソフトフォークと呼びます。
ソフトフォークで問題を修復できなかった場合、ブロックチェーンは別のアップデートを実施します。
これをハードフォークと呼びます。そしてこの時にブロックチェーンが分裂されるのです。
分裂するとあらたな通貨が派生する
分裂すると新たなブロックができる為、これに伴い新たな通貨が派生します。
かつてビットコインには幾度かの分裂によって新たなコインが派生しています。
主な通貨としては「ビットコインキャッシュ」「ビットコインゴールド」があげられます。
暗号資産の種類
暗号資産はビットコインの他にもあり、その数はなんと数千種類に及ぶと言われています。
ここではその中でも代表的な仮想通貨を紹介します。
イーサリアム
イーサリアムはビットコインに次ぐ世界シェアを誇っている、知名度の高い仮想通貨で単位は「ETH」です。
ビットコインと異なる点は残高の情報だけでなく、契約内容も記録できるという点です。
例えば、10通貨を年利0.1%で借りたとすれば、その金利も記録されるというわけです。
リップル
リップルはカナダのウェブ開発者である Ryan Fugger氏 により開発された仮想通貨で、単位は「XRP」です。
現在イーサリアムに次ぐ第3位のシェアを持っています。
リップルの特徴はなんと言っても送金のスピードです。
ビットコインで数分かかるものをリップルはわずか数秒で行うことができます。
また、発行枚数も1000億枚と、ビットコインよりも断然に多いものとなっています。
ビットコインキャッシュ
ビットコインキャッシュは先述のようにビットコインからの分裂により派生した通貨です。
シェアは現在第4位となっており、単位は「BCH」で表記されます。
ビットコインとの違いは1つのブロックの情報量が多い点です。
流通量がまだそれほど多くない為、今後が期待される仮想通貨とされています。
暗号資産に関する犯罪・被害・対策
暗号資産が画期的な発明であるのとは裏腹に、日本では同時にマイナスのイメージがあるのが事実。
日本ではなぜ仮想通貨に対して悪いイメージがあるのでしょうか。
暗号資産はなぜ怪しいのか?
ビットコインには怪しいイメージがあるようですが、実はそれはビットコインそのものではありません。
ビットコインは2017年の急騰から2018年の大暴落の間に、一部の人が大きな儲けを得ました。
この時からビットコインはにわかに認知度が高まり、同時にそれを利用した悪徳業者が増えました。
このことから、ビットコインは詐欺に使われる商品とのイメージがついてしまった点があるようです。
取引所がハッキングされる
ビットコインに関する大きな事件としては、取引所のハッキングがあります。
2014年の「マウントゴックス」、2018年の「コインチェック」の2件が最も知られている事件です。
これらは、取引所間の送金の際に盗まれたもので、いずれもブロックチェーンのシステムの問題ではありません。
これは、銀行間の送金の際に強奪されることと同じと言えます。
マネーロンダリング
暗号資産が否定される理由の1つに、マネーロンダリングに使われるのではないかという意見があります。
その可能性は否定できませんが、ブロックチェーンシステムは、実は法定通貨よりもお金の経路を分かりやすくしています。
暗号資産そのものは透明性が高い
非中央化されたブロックチェーンのシステムは、不正な送金が行いにくいようになっています。
悪いイメージの暗号資産ですが、実は法定通貨よりも透明性の高いものとなっています。
暗号資産に関する犯罪は、それを利用した詐欺やネットワークビジネスです。
「特に簡単に儲ける事ができる」などの誘い文句は、まず疑うようにしましょう。
今後暗号資産はどうなる
現在、日本は主要先進国の中でも、最もキャッシュレス化が遅れていると言われています。
世界でキャッシュレス化が進んでいる事を考えると、暗号資産のシェア拡大の可能性は大きいと言えるでしょう。
また、昨今は暗号資産が資産運用としての投資商品の1つとしても注目されています。
これから、少しずつでも暗号資産に対する知識を深めていく必要があるかもしれません。
また、暗号資産を利用した犯罪から身を守る為にも、暗号資産が何かを知っておくことは良いことです。