リレーアタックの防犯対策 | スマートキーを利用した手口と距離は?

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最近発売されている車には「スマートキー」と呼ばれるシステムを装備している車が増えています。

ポケットやカバンの中などに車のキーさえあれば、ドアノブに手を近づけるか軽く触れるだけでロックやアンロックができてしまう方式です。

さらにエンジンの始動や停止も、指先で軽くボタンを押すだけで行うことができます。

車を乗り降りする際にいちいちキーを取り出さなくても良いので、雨の日や荷物が多い時などは特に便利に感じるシステムといえるでしょう。

しかしながら、そんな便利なスマートキーを狙った車の盗難手口が報告されています。

いわゆる「リレーアタック」と呼ばれる方法で、もともとは海外で多発していた手口ですが、最近では日本でも急増しているのです。

ここでは大事な愛車を簡単に盗まれることのないようリレーアタックによる盗難の対策を徹底解説。

スマートキーを利用した盗難手口や、簡単にできる被害防止の方法なども紹介いたします。

車の施錠システムについて

リレーアタックについて理解する為に、現在の車に使用されている主な施錠システムについて解説いたします。

機械式キー

機械式キーは少し旧式の車や商業車など廉価版の車で使用されていることが多い方式です。

昔ながらのアナログ方式でドアロックの開け閉めもエンジンの始動停止もすべて手動で、金属製のキーを鍵穴に差し込んで回します。

キーレスエントリー

キーレスエントリーは別名リモコンキーとも呼ばれ、スマートキーが開発されるまでの主流の方式で、現在でも多く使われているシステムです。

キー本体やキーホルダー部分にボタンが装備されていて、そのボタンを押すことでリモコン方式によりドアのロックとアンロックができます。

ドアの開錠や施錠をする際には離れていても確認できるよう、ハザードランプが点滅したり電子音が鳴ったりするタイプが多いです。

エンジンの始動は機械式キーと同じで、手動でキーシリンダーにキーを差し込んで回して行います。

スマートキー

車のスマートキースマートキーはスマートエントリーシステムとも呼ばれ、メーカーで呼び名は異なりますがキーレスエントリーの機能がさらに進化したものです。

スマートキーからは常に微弱な電波が出ているので、車の近くにキーがあれば車のシステム本体と交信して様々な操作が行えます。

たとえばポケットや手に持ったバックなどにスマートキーが入れてあれば、いちいち取り出さなくてもよいのです。

スマートキーを身につけてさえいれば、ドアノブに軽く触れたり車に近づいたりするだけでドアのロックやアンロックができてしまいます。

その際はハザードランプや電子音などで操作確認(アンサーバック)ができるタイプが多いです。

さらにキーレスエントリーと大きく異なる点は、エンジンの始動や停止までもキーを使わずにスタートボタンを押すだけで可能なことでしょう。

スマートキーとシステム本体が交信する際にはIDの照合を行い、IDが一致しないと作動しない仕組みとなっているので防犯性にも優れています。

リレーアタックの手口とは

車上荒らしを狙う犯人

それではリレーアタックによる車両盗難とは実際にはどのように行われているのでしょうか。

ここではリレーアタックによる盗難事例を再現しながら、具体的な犯行の手口を解説いたします。

あなたは街中のコンビニエンスストアでコーヒーでも買おうと駐車場に車を停めました。

最新のスマートキー搭載車なので、ボタンを指先で軽く押せばエンジンは停止します。

そのまま車を降りてキーはポケットにいれたままでドアノブに軽く触れると、ハザードランプが点滅して全てのドアが自動でロックされました。

「やはりスマートキーは便利だなぁ」と思う瞬間です。

ところが買い物をすませて、ほんの数分後に駐車場に戻ると、まるで煙のように自分の車が消えているのだから驚きます。

「そんなはずはない!」と慌ててポケットを確かめると、確かに車のキーはあるのです。

車を離れる際には、間違いなくドアロックがされたことも確認しました。

思わず近くにいた人に「ここに停めてあった車を知らないですか」と尋ねてみます。

「ああ、その車でしたら今しがた男の人が普通にドアを開けて、エンジン掛けて乗っていきましたよ。持ち主ではなかったのですか?」

リレーアタックによる車の盗難はこんな感じで、あっという間に周囲の誰に疑われることもなく実行されてしまいます。

おそらく店内でレジを待つ間に、あなたのすぐ後ろに並んでいた男が共犯者でしょう。

リレーアタックの仕組みとは

次にリレーアタックが行われる仕組みについて説明いたします。

リレーアタックはスマートキーの電波を使う

リレーアタックはスマートキーが常に微弱な電波を発信していることを悪用した盗難方法です。

スマートキーは車の内部にあるシステム本体と電波で通信してIDが合致すれば、持ち主であると認知してセキュリティが解除されます。

通常ではスマートキーの電波がわずか0.5~1メートル程度しか届かない設定になっているのは防犯上の理由からです。

もしもスマートキーの電波が強力であったなら、車から離れた場所でも作動してしまい簡単に車を盗まれてしまうでしょう。

そのために持ち主がスマートキーを身に付けた状態で車のすぐ脇や車の中にいない限りは、作動しない設定になっているのです。

ところがリレーアタックではこの圏外にあるはずのスマートキーの微弱な電波を、ある方法により車まで届かせることで実行されます。

リレーアタックが実行される手順とは

車泥棒

それではリレーアタックによる盗難は、実際どのような手順で実行されるのでしょうか。

通常リレーアタックを行う際には複数の人間、最低でも2名かそれ以上の人数が必要です。

まず一人がスマートキーを持っている車の持ち主に近づき、スマートキーが常時発信している微弱な電波を特殊装置で受信します。

つまり車の所有者が持っている正規のスマートキーの電波を泥棒するのです。

そしてその盗んだ電波を中継装置で増幅して、車のそばにいる仲間へと送信します。

電波を盗んだ場所からターゲットの車まで距離がある場合には、その間に何人かの仲間を置いて中継(リレー)しながら電波を転送するのです。

最終的に車の脇にいる仲間はそれを専用装置で受信して、その場でもとのスマートキー電波に戻します。

すると車についているスマートエントリーシステムは、正規のスマートキーからの電波だと誤認してしまうのです。

犯人はまるで車の所有者のようにドアノブに軽く触れてドアロックを解錠すると、そのまま車に乗り込みエンジン始動のボタンを押します。

あくまでも正規のスマートキーの電波で作動させているので、ID照合もクリアしてイモビライザーによるセキュリティも突破されてしまうのです。

犯人はそのまま車を走らせて、窃盗団の隠れ家へと運び込んでしまいます。

当然ながらリレーされた電波で始動したエンジンなので、現場から離れた場所で停止させると二度と掛けることはできません。

窃盗団はそんなことは承知の上で、すぐに違う装置に取り換えて海外に運び出したり、車を解体したりして部品として売却してしまうのです。

自宅の駐車場でも危険な理由

最近では自宅の駐車場でもリレーアタックによる盗難被害が増加しています。

家の中に保管されているスマートキーの電波を壁を通した家の外で受信して、リレーアタックを実行しているケースが増えているのです。

窃盗団が使用している微弱電波を盗むための特殊装置の性能が、年々向上している可能性が考えられます。

犯人からすれば車が駐車されている家には確実にスマートキーが保管されているのですから、狙いをつけて電波を盗めるのです。

リレーアタックを防止するには

車のドアを開ける男性

リレーアタックを防止するには、スマートキーから常時発信されている電波を盗まれないよう遮断する対策が最も有効です。

最近ではカー用品店や通販でもさまざまなリレーアタック防止用のグッズが販売されていますので、それぞれの特徴について解説いたします。

電波遮断ポーチに入れる

電波を盗まれないよう妨害するには、アルミやブリキなどの金属で遮断するのが有効です。

そのためにキーを身に付ける時に、アルミなどで内側が加工されている専用ポーチなどに入れておくのは非常に有効な手段となります。

実験ではアルミホイルでキーを包んでも有効なのだそうですが、これを毎回やるのは面倒ですので専用の電波遮断ポーチを利用するといいでしょう。

100円ショップには携帯用灰皿や携帯用ペットボトル入れのように内側がアルミ加工された商品もあります。

それらを流用することも可能なのですが、少しでも隙間があると電波は漏れてしまいますので注意してください。

保管用ボックスに入れる

前章で解説したように、最近では自宅に置いてあるスマートキーの電波を盗まれる事例も発生しています。

自宅にキーを保管する場合でも油断せず、やはり電波を遮断する保管用ボックスなどに入れておくようにしましょう。

お菓子などに使われるブリキやアルミ製の缶なども、金属のフタをして密封すれば充分に利用可能です。

最近ではスマートキー専用のオシャレな保管用ボックスもたくさん販売されていますので、利用するのもよいでしょう。

車には必ずスペアキーが付いていますので、そちらを自宅で保管する場合にも必ず電波を遮断する容器に入れるようにしてください。

節電モードを利用する

スマートキーを「節電モード」にすることで電波を出さないようにするもので、一部の自動車メーカー(トヨタ・レクサス)で設定可能です。

スマートキーについているボタンを決められた手順で操作することで設定できます。モードを解除するにはボタンを押せば簡単に戻ります。

本来の目的は長時間スマートキーを使用しない時の電池の節約ですが、設定すれば電波も出さなくなるのでリレーアタックにも有効です。

駐車した直後の周囲に注意する

リレーアタックはスマートキーから出ている微弱な電波を盗むために、犯人の一人は必ずあなたに近距離で接近してきます。

特に駐車して車を離れた直後は周囲に気をつけてください。不自然に1メートル以内に近づく人がいた場合は要注意です。

人混みやレジなどに並んでいる時などは、自然な形で狙われやすいので気を付けましょう。

コンビニの駐車場のように車両の持ち主が判別しやすいシチュエーションが、最も危険な状況となりえます。

究極の盗難手口が日本上陸?

最近になって「コードグラバー」という特殊装置を悪用した、現時点では最新と呼ばれる盗難手口が国内でも報告されています。

これは「コードグラビング」といわれる手口で、リレーアタックを進化させたような悪質な盗難方法です。

コードグラバーという装置は本来は鍵の紛失などに備えてスマートキーを複製するためのもので、海外では簡単に入手できます。

近年海外ではこの装置を悪用した「コードグラビング」と呼ばれる脅威の盗難方法が増加しているのです。

コードグラバーの最大の特徴はスマートキーの電波ではなく、車本体のシステムの電波を受信して信号に含まれるIDを複製できる点でしょう。

つまりスマートキーがなくても車両本体があれば、いつどこでもIDを複製してイモビライザーも突破してしまいます。

これが現時点では対策不可能で、最強の盗難方法とまでいわれているゆえんです。

またリレーアタックによる犯行は複数の人数が必要なので大掛かりですが、コードグラバーを利用した犯行は単独犯でも実行できます。

いよいよこの究極の盗難手口が日本にも上陸したといわれていますので注意が必要です。

まとめ

チェーンで縛られた車

リレーアタックによる被害に遭わないよう、現在考えられる最善の対策を解説してきましたが、完璧に防ぐのはなかなか困難です。

絶対に車を盗まれたくないというのであれば、最終的には物理的な方法で車を移動できなくするしか方法はありません。

リレーアタックに対抗するために、さまざまな最新の電子防御装置も開発されていますがイタチごっこになっているのが現状です。

一般的には電子的なセキュリティは、それを上回る電子的な方法により破られてしまいます。

逆に機械的なセキュリティは物理的に破壊するしか方法がないのですが、物理的に破壊するのは意外に手間が掛かるものです。

つまり機械的な道具による「ハンドルロック」や「タイヤロック」を併用することは、かなり有効な防衛手段となります。

窃盗団が侵入できない強固なガレージでもない限りは、機械的な道具で物理的に車を動かせなくする方法を実行して諦めてもらうしかありません。

ここでも盗難を防ぐための一番の対策は「この車を盗むのは面倒だな、時間が掛かるな」と思わせることなのです。

本サイトの記事は犯罪に巻き込まれない、犯罪を未然に防ぐという観点から書かれたものであり、 実際に犯罪に巻き込まれた場合や身に迫る危険がある場合はすぐに最寄りの警察署までご相談ください。

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