自分の全財産、尊厳、他のさまざまなものを含む膨大な量のデータを、今や手のひらサイズに収め持ち運んでいる現代社会。
現代に生きている限りそのようなデバイスを適切に管理し悪意ある人たちから保護することは、自分の命を守るのと同じほど大切です。
デジタルデバイスに関する防犯を語る上で欠かせないのが、本当に使用しているのが本人なのかを確認するための認証方式。
近年、スマートフォンのロック解除のためにたくさんの認証方式が実用化されてきました。
この記事ではその一つ、虹彩認証について掘り下げていきたいと思います。
生体認証の特徴
生体認証とは私たちの身体的特徴を使って本人かどうかを判別し、それをセキュリティの分野に応用したものです。
虹彩認証はその一つに分類されます。
最近ではスマートフォンやATM、その他の多くの機器に生体認証が導入されているものが増えてきました。
まずは数種類ある生体認証方式が全般的にもつメリットとデメリットについて押さえておきましょう。
メリット
生体認証の導入が進んでいる大きな理由の一つは、成りすましの可能性を極端に低くできるということでしょう。
例えばパスワードやパターンなどは、他の人が一瞬見て記憶してしまえば成りすましが可能です。
一方で私たちの身体的特徴はそう簡単には変わらず、また意図的に変えることも非常に難しいといえます。
他人の身体を無理やり持ってきて認証しようとしない限りは、より安全な認証方式といえるのです。
また、パスワードなどのように記憶したりメモしたりする必要がないというのも大きなメリットです。
デメリット
生体認証全般が抱えるデメリットは、私たちにとってほとんど意識することはないといっても過言ではないでしょう。
それは導入コストが比較的高いということです。開発コスト、認証に使用する機器が比較的高価なのです。
とはいえ、今やそのような割高感をスマートフォン購入時に感じることはほとんどないのではないでしょうか。
生体認証は既にスマートフォン等での欠かせない機能の一つとして地位を確立しているのです。
虹彩を使って認証する方式とは
それではいよいよ生体認証の一つの種類、虹彩認証とはどのようなものなのか解説していきます。
虹彩とは
私たちの身体の一部分、虹彩がどこにあるのかをご存知でしょうか?ほとんどの方は理科や生物の授業で聞いたことがおありのことでしょう。
虹彩とは私たちの目の瞳の中にある、色の薄いドーナツ状の形をした部分のことです。
暗いときは虹彩が外側に薄くなり多くの光を取り入れ、逆に明るいときはキュッと光を絞る役割をしてくれます。
私たちが普段何気なくモノが見えているのは、この虹彩のおかげであるといっても過言ではありません。
虹彩の何を読み取るのか
私たちにとって虹彩が普段果たしてくれている役割を意識するということはほとんどありません。
虹彩を生体認証の一つであることにピンと来ない方はきっと多いことでしょう。
実は虹彩には指紋などのように多くのシワがあり、それらは一人一人大きく異なっています。
このシワのパターンをカメラを使用して読み取ることにより認証を行うのが虹彩認証です。
一生変わらない上に高精度
虹彩認証は、実は防犯上非常に安全な精度の高い認証方式の一つです。
虹彩のシワのパターンは、私たちのDNAだけでなく乳児期の目の使い方や癖によって形成されます。
当然眼球一つ一つの癖は千差万別ですから、双子どころか同一人物であっても右目と左目では虹彩のシワのパターンは異なります。
その判別精度の高さは指紋や静脈、顔認証など他の生体認証方式を大きく上回ります。
さらにこのシワのパターンは生後2歳までの間にできあがった後は一生変わることがありません。
虹彩認証のメリット
虹彩認証を導入した機器を使うことは、私たちにとってどのようなメリットをもたらしてくれるのでしょうか?
高い利便性
私たちの身の安全を左右するセキュリティ認証。とはいえ、その認証に煩雑な作業や時間をかけるのはストレスの原因となります。
その点、虹彩認証はいかがでしょうか。ただ一瞬、1秒足らずの時間で認証が完了してしまう手軽さです。
パスワード認証のような入力の手間どころか、指紋認証のように接触することなくカメラをチラッと見るだけです。
顔認証とも違いマスクをしている人にとっても、この認証方式は非常にありがたい存在といえるかもしれません。
まさに実用化されるべくしてされた便利な認証方式といえるのではないでしょうか。
経年変化がない
セキュリティ認証が自分を弾いてしまってログインできないということが実際あります。
指紋認証をお使いの方は、指紋がシワシワになってたり、傷ついたり削れたりして認証できなかったという経験はないでしょうか。
また顔認証をお使いの方であれば、自分のはずなのに認証できなかったということはないでしょうか。
これらの認証方式は経年変化にやや弱いものであるといえるでしょう。
一方で虹彩のパターンは一生変わることがありません。
ということは、私たちは目を失わない限りは数十年後も同じ登録情報で認証できるのです。
高い安全性
認証精度が高いことは前の項目で少し触れた通りで、手軽さと安全性が非常に高いレベルで両立された方式といえます。
その認証精度は他の生体認証方式を凌ぎ、他人を誤って受け入れてしまう確率は限りなく低いものです。
安全性でスマホを選ぶなら虹彩認証が有力な選択肢として挙がることは間違いありません。
虹彩認証のデメリット
どんな認証方式にもそれぞれデメリットは存在します。
必ずカメラを見る必要がある
例えばクルマを運転中のドライバーが同乗者のために自分のスマホのロックを解除するところを想像してみてください。
運転中にもかかわらず一瞬スマートフォンのカメラに目をやる必要があります。この行為は決して勧められるものではありません。
他にも同様に顔や目の向きを制限された状況下では指紋認証と比較してやや不便であるといえるでしょう。
カメラの性能や状態に依存
指紋認証の指紋センサー等でも同様のことがいえますが、虹彩認証も虹彩パターンを読み取る機器が適切な状態でなければなりません。
一般的にスマホの場合はカメラに該当しますが、レンズが汚れたりしている場合は機能しなくなってしまいます。
泥や埃の多い環境下にいることが多いユーザーにとっては少し検討すべき分野かもしれません。
スマホの生体認証やアプリの活用方法
2020年3月現在において今後デバイスへの搭載と普及が期待される虹彩認証。どのような活用方法が好ましいのか考察してみましょう。
銀行口座等のアプリでの使用
スマホの普及に伴ってますます一般的になったインターネットバンキング。
いつまでもたくさんのIDやパスワードを管理したり記憶して瞬時に利用するのは難しい方は少なくないのではないでしょうか。
多くの金融機関が提供するアプリは既に生体認証に対応しています。
虹彩認証はまだまだこれから普及が期待される方式であるものの、これらを利用することで口座の管理等がとてもスムーズになるでしょう。
認証方式は常に併用
どんな生体認証方式も、デバイスの状態や不具合によって時に認証できない状況に直面することはあるものです。
最終的にはPINコードやパスワード等を引っ張り出してきて認証せざるを得ないことは必ずあります。
ですから、虹彩認証についても決して油断することなく、パスワード等は常に適切に管理しておきましょう。
まとめ
ヒトの身体を個人の認証に使用するために多くの研究が重ねられてきました。
そんな数ある生体認証方式の中でも虹彩認証はとても魅力的なものであるということがお分かりいただけたのではないでしょうか。
どうぞ今後のスマホなどの商品選びの際にご参考にして頂けると幸いです。