セクハラや性被害の告発の場として、2017年から世界中で広がりをみせてきた#MeToo運動。
これによってこれまで被害にあってきたにもかかわらず泣き寝入りをするしかなかった被害女性たちが、次々と過去の被害を告発。
世界中に広がり、日本のSNSでも多くの女性の共感を集めました。
しかし一方で、被害の声を上げたことで「セカンドハラスメント」という二次被害が発生するおそれもあります。
今回はセクハラや性犯罪を抑制するための取り組みや、被害女性が自分の身を守るための対処法をご紹介します。
日本の#MeTooの現状
2017年、ジャーナリストの伊藤詩織さんが性暴力の被害を実名・顔出しで告発し日本社会に大きなインパクトを与えました。
それを機に作家の森まゆみさん、人気ブロガーのはあちゅうさんといった著名人が過去のセクハラ被害を告白。
日本でも少しずつ#MeToo運動が広がりをみせ始めました。
このように日本でも声を上げる被害女性が現れる一方で、実際は「声を上げにくい」という環境がいまだに根強いということも事実です。
日本でセクハラや性犯罪を抑制するためには、どうしたらいいのでしょうか。
他人事ではない 身近にあるセクハラ
職場はセクハラが特に起こりやすい環境といえます。
上司や先輩という社会的立場が上であることを利用することで相手にNOと言いにくい状況を作るのです。
女性の活躍推進を掲げる企業が増えているにもかかわらず、今後のキャリアへの影響をちらつかせて付け入るような悪質な手口も蔓延しています。
また「スクールセクハラ」という事例も数多く存在します。
教師という立場を利用した性的嫌がらせのほか、教師同士や生徒・児童同士でおこる場合もあるのです。
他にも大学でおこるアカデミック・ハラスメント、家族間や友人間と、生活の中のさまざまな状況でセクハラが起こりうるといえるでしょう。
セクハラに関する取り組み
厚生労働省の資料によると、男女雇用機会均等法に関する相談の約4割が職場でのセクハラ被害についての相談なのだとか。
そもそも男女雇用機会均等法は性的嫌がらせ防止の対策を事業主に義務付けています。
しかし、会社はセクハラ・性犯罪に対してどのような取り組みを行っているのでしょうか。
社長が「ハラスメントは許さない」と発言する
経営者である社長がトップメッセージとして「性的嫌がらせを許さない」という姿勢を明確にすることでハラスメントが起こりにくい職場環境をつくります。
セクハラは「あってはならないもの」と明確化する
役職のある立場の人だけではなく、労働者も含め社内全体で「セクハラはあってはならない」という方針を周知・徹底することで、会社としても立場を示します。
加害者に対する厳格な対処方針を周知する
性的いやがらせを行った加害者に対しては厳重に対処するというポイントを、就業規則に明記するなどして周知します。
相談窓口(ホットライン)を設置する
あらかじめ相談窓口をつくっておき被害者が相談しやすい環境をつくります。また相談に対して適切に応じられるよう、体制を整備します。
#MeToo運動によって変化したアメリカの状況
#MeToo運動が広がり始めた2017年以降、職場での性的嫌がらせの申し立て件数が大幅に増加しています。
アメリカ政府の独立機関「雇用機会均等委員会」(EEOC)の発表を確認してみましょう。
それによると2017年10月~2018年9月の申立件数は前年の同時期と比較して12%以上増加しました。
これは、今までセクハラ被害に対して泣き寝入りに甘んじていた女性が、次々と声を上げられるようになった結果といえます。
セクハラの二次被害「セカンドハラスメント」とは
しかし一方で、セクハラを相談・告発した人が「セカンドハラスメント」という二次被害にあうケースが増えています。
前述した伊藤詩織さんやはあちゅうさんも被害告発後に少なからずのバッシングを浴びたという現実があります。
ハラスメントを受けた被害者が周囲に相談したことによって嫌がらせを受けたり、かえって責められたりする二次被害。
これを「セカンドハラスメント」といいます。
またそこまでわかりやすいバッシング以外でも、相談を受けた側が発する何気ない言葉によって相談者がさらに深く傷つくことも。
- 拒めたのではないか
- もっと早くに声を上げればよかったのではないか
- そんなことはセクハラに入らないのではないか
など、相談者の悩みを矮小化したり発言を封じ込めてしまうような言葉はセカンドハラスメントにあたります。
被害女性が身を守る方法とは
声を上げた被害女性がセカンドハラスメントから身を守るにはどうしたらいいのでしょうか。
証拠を集めてまとめておく
被害を受けた日時や場所、時系列といった状況を冷静に思い返し記録しておきましょう。
周囲に誰かがいた場合は証人になってもらえる可能性もあります。
事前の準備は難しいですが、会話データや録画データがあると重要な証拠になるのです。
また状況をまとめておくと事態を客観的に俯瞰できるようになります。
これによりセカンドハラスメントを受ける隙をなくすことにつながります。
「自分が悪かったのかもしれない」と自分を責めない
精神的に傷ついているときに状況を冷静に俯瞰するのは難しいこと。
なかには「自分が悪かったのかもしれない」と自分を責めてしまう人もいるでしょう。
しかしもしセクハラをされた事実があるのなら加害者に大きな非があります。
反省点は今後の行動に活かすとして自分を責めないようにしましょう。
毅然とした態度でいる
「どうしてNOと言えなかったのか」というのは立派なセカンドハラスメントです。
「泣き寝入りはしない」「セクハラは許さない」など立場をはっきりさせ、毅然とした姿勢を示しておくことが必要です。
被害をむやみに吹聴してまわらない
傷ついたときには誰かに聞いてほしい、相談に乗ってほしいという気持ちになりますが、むやみに多くの人に吹聴してまわることは避けましょう。
誰かれ構わずに被害があったことを話してまわっていることを、中にはよく思わない人もいます。
相手はカウンセリングの専門家ではないので答えに窮してしまうこともあるかもしれません。
その結果何気ない言葉がセカンドハラスメントにつながってしまうこともありえるでしょう。
日時や場所、時間軸といった被害の状況をしっかりまとめ、専門の窓口や信頼できる相手にしぼって相談することが大切です。
少しのあいだ距離をおく
勇気を出して相談したのにもかかわらず相手から無神経な言葉を受けてしまった時。
そんな時はなんとしてもわかってもらいたいと必死にならずに「距離をおく」ことも必要。
セカンドハラスメントで顕著なのは相手にも悪気があるわけではない場合があること。
自分の気持ちの整理がつくまでは距離をおくことが大切です。
お局様には相談しない
勤続年数が長く、社内で幅をきかせている女性・いわゆるお局様には相談しないほうが賢明です。
「昔は当たり前だったのよ」「セクハラはかわせて一人前」
自分の話とすり替えられたり、そもそもの問題を問題と認識できない人だったり…。
このように、相談したことでセカンドハラスメントを受ける可能性があります。
服装に気をつける
丈の短いスカートや胸元が過剰に空いた服など露出の多い服装をできる限り避けましょう。
本人にその気はなくても「あなたがそんな服装をしていたからセクハラにあったのでは?」といったセカンドハラスメントにつながる可能性も。
ファッションが好きで服装を制限されたくない人であれば、露出の少ない服装をどう工夫するか当その状況を楽しむ気持ちがあるといいですね。
第三者機関を利用する
セクハラに対する問題意識が浸透していない会社では、社内の相談窓口でセカンドハラスメントが起こりうる可能性があります。
もともと会社的に信頼の高かった役職者が相手だった場合など会社は加害者側をかばう発言をするかもしれません。
そういった環境で問題が小さくされてしまうことを避けるために、しっかりと第三者的な立場から話を聞いてくれる機関を頼るようにしましょう。
民間が運営している窓口のほか、国が設置している相談窓口もあります。
トラブルの総合案内所である「法テラス」や法務省の「女性の人権ホットライン」などもチェックしてみましょう。
まとめ
#MeToo運動の世界的な広がりは、セクハラ被害者が声を上げるための勇気ときっかけになりました。
しかし、声をあげたことによる「セカンドハラスメント」によって被害者は二次被害にあうというリスクがあることを紹介してきました。
セクハラなど性被害にあっただけで戸惑ってしまうのに勇気を出して公表して、さらに心ない言葉で傷つけられてしまったらとてもつらいです。
今回紹介した「セカンドハラスメント」の実例を参考に、これ以上傷つかなくて済むように自己防衛を怠らないようにしてください。