著作隣接権と聞いてもピンとこない方も多くいらっしゃるでしょう。
しかし、著作隣接権は私たちの生活にとって身近な存在です。
たとえば、趣味のカラオケ動画をYouTubeにアップしたい方などは著作隣接権の知識が必要となります。
前もって知っておくことで、著作隣接権を侵害しない対策法を講じられます。
著作隣接権が保障されている人たちとは
実演家
実演家とは、著作物を演じる人のことです。歌手・演奏家・俳優・指揮者・演出家などがこれにあたります。
著作者ではないけれど、著作物を多くの人々に伝える人が著作隣接権に守られているといえます。
実演家はプロである必要はありません。趣味で演じる人々も含まれます。
実演家は著作隣接権のほかに「実演家人格権」にも守られています。
これにより自分の実演の名義をどうするかを決められます。
また、自分の名誉を害するような改変をされないように保護されます。
レコード製作者
レコード製作者も、著作物を伝えるものとして著作隣接権に保護されます。
レコードとは、CD・DVD・ハードディスクなどをさします。
レコード製作者は、著作隣接権によりレコードを複製する権利を得ています。また、譲渡や貸与も認められます。
商業用レコードを有線などで放送された場合は使用料を得られる権利もあります。
つまり、レコード製作者以外がCDなどを私的利用以外で複製するのは著作隣接権の侵害であるといえます。
放送事業者及び有線放送事業者
放送にかかわる業者なども著作隣接権に保護されます。
私たちになじみが深いのはテレビや有線放送です。
放送及び有線放送を録音・録画・複製できる権利があります。
テレビでの放送や再放送の権利も著作隣接権が絡むものです。
私たちが普段お店で何気なく聴いている有線放送にも著作隣接権が深くかかわっているということです。
著作権との違い
創作者の権利と伝達者の権利
著作権は創作者の権利で著作隣接権は伝達者の権利といえます。
著作権は作家や画家などのクリエイターをはじめ、自分の著作物をもつ人全てがもつ権利です。
著作物が生まれてから著作者の死後70年間まで守られます。
著作権は大きく「著作者人格権」と「著作権(財産権)」に分かれます。
これにより、著作物の不正使用や著作者の名誉が保護されるのです。
一方、著作隣接権は、実演家など著作物を伝える人の権利です。
著作権に守られた著作物を、正当に伝達するために実演家などが保護されます。
実演という行為やそれが広く伝えられる放送が守られます。
実演家はじめ伝達者の利益や権利が守られることにより、私たちは安心してテレビやCDを楽しめるのです。
著作隣接権は実演・レコード発行が行われたときから70年間、放送又は有線放送が行われたときから50年間守られます。
著作権と著作隣接権を侵害した場合
著作権を侵害した場合、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金に処せられます。懲役と罰金が併科されることもあります。
著作隣接権を侵害した場合も、同様に10年以下の懲役または1000万円以下の罰金に処せられます。
同じく、懲役と罰金が併科されることもあります。
法人がこれらの権利を侵害した場合は、なんと3億円以下の罰金に処せられます。
いずれの権利も侵害してしまうと大変な刑罰が下される場合があるとわかりました。
知らずに侵害してしまったということのないように、十分に知識を持ち注意深く行動しましょう。
著作隣接権侵害の事例
音源を無断で商業使用
自分のお店を持ち、BGMに持っているCDを流したいと考えた場合です。
楽曲の著作権と、実演家およびレコード製作者の著作隣接権に配慮しなければなりません。
許諾なく音源を使用した場合、著作権及び著作隣接権の侵害になる恐れがあります。
許諾なく使用する場合、私的に楽しむためなら権利の侵害にはなりません。
しかし、商業利用する場合には必ず許可をとらなければいけません。
著作権と著作隣接権両方に配慮して許諾を得ましょう。
海賊版のCDを購入
安いからといって、海賊版のCDを購入した場合です。
海賊版CDは、著作者や実演家の許可なくコピーされたCDのことで、存在自体が違法です。
製造されることによって、実演家やレコード会社の著作隣接権を著しく侵害します。
売れてしまえば、さらに海賊版CDは増えてしまいます。
だから、私たちは断固として海賊版CDを購入してはならないのです。
また、ネット等にアップロードされている音源などを違法と知りながらダウンロードするのも違法です。この場合は私的利用でも違法となります。
2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金が科せられることになります。懲役と罰金は併科されることがあります。
著作隣接権と結婚式
BGMは私的利用の範囲外となる
結婚式のBGMに好きなミュージシャンの曲を使いたいという場合です。
結婚式のBGMは私的利用の範囲外となるため許諾が必要なのです。
「商業利用じゃないのになぜ」と思われるでしょうか。
結婚式で音楽を流すと、その場にいる大勢がそれを聴くことになります。すると私的利用の範囲を出てしまうのです。
ですので許諾を得る必要がありますが、多くの結婚式場はすでにその手続きを済ませています。
自分の使う式場が許諾を得ていなかった場合は、自分たちでJASRACなどに申請する必要があります。
音源は必ずCDの原盤を
結婚式でダウンロードした音源やレンタルCDを使用してはいけません。
いずれも私的利用のみが許可されています。結婚式は私的利用の範囲外です。
流したい曲があるならば、必ずCDの原盤を用意しましょう。
また、結婚式場が著作権・著作隣接権の許可を得て手続き済みの場合でも、その使用料は新郎新婦に請求されます。
著作権が1曲200円以上、著作隣接権が1曲2000円以上かかります。
BGMは、以上のことを頭に入れて式場と相談しながら決めましょう。
著作隣接権とカラオケ動画
カラオケ音源での歌ってみた
YouTubeに自分の動画を投稿してみたいと思ったとします。
「歌が得意なので、カラオケで歌う姿を動画に撮って投稿しよう」
これは著作隣接権を侵害する行為です。なぜなら、カラオケ音源はレコード製作者にとっては著作隣接権で守られている存在だからです。
歌ってみた動画は趣味の範疇を出ないのだから、私的利用ではないかと思われるでしょうか。
しかし、YouTubeに公開した時点で動画は公のものとみなされます。このケースは実際裁判で争われました。
カラオケ機器メーカーがYouTube動画の削除を訴え、裁判所は著作隣接権侵害としてその請求を認めました。
カラオケ会社のプラットフォームの利用
では、歌ってみた動画を撮影するにはどうしたらよいのかという問題です。
カラオケ会社のプラットフォームを利用して動画を撮れば著作隣接権の侵害にはなりません。
「DAM★とも」「うたスキ動画」などがこれにあたります。
これらを利用すれば、カラオケ音源で歌った動画を公開してもまったく問題ありません。
歌ってみた動画をやってみたい人は、ぜひ利用してみましょう。
まとめ
まずは著作隣接権で保護されている人たちについて整理しました。
次に著作隣接権と著作権の違い、侵害した場合や結婚式やカラオケ動画での注意点をまとめました。
著作隣接権の侵害は重い処罰を科せられることもあり、知らなかったでは済まされません。
ぜひ頭の中にいれておき、日々の生活に役立ててみてください。