何らかの理由で困った顔の家族や知人・友人から、名義を貸すように頼まれることがあります。
「名義を貸す程度で問題解決につながるのなら」と、あっさり貸そうとする方もいるでしょう。
しかし名義貸しは危険が多いうえ、何の得にもなりません。
今回は名義貸しにはらむリスクや、トラブルの回避法などをご紹介しましょう。
名義貸しとは、他人と第三者が取引する際に、自分の氏名や商号、免許などを貸し、登録や契約、営業などをさせること。
引用:名義貸し(コトバンク)
名義貸しはなぜ危険なのか?
銀行口座や携帯電話、クレジットカードなどの名義を貸すのは、簡単なことのように見えます。
しかし残念ながら名義貸しを行うと、危険に巻き込まれることが多いです。
名義貸しにはらむリスクとしては、以下のような理由が挙げられます。
名義貸し自体が犯罪行為のため、逮捕されるリスクが
実は名義貸しを行うこと自体が犯罪行為です。より具体的には、詐欺罪が適用されます。
そして詐欺罪は刑事罰であるため、明るみに出た場合は警察沙汰です。
逮捕された場合、自身の信用や評判が落ち、加えて前科が付くことになります。
詐欺罪=詐欺師のイメージもあるため、詐欺師扱いされることもあるでしょう。
「外国通貨を購入しないなら権利を譲ってほしい」。女性が承諾したところ、他の証券会社を名乗る人から「名義貸しは犯罪だ」「示談で済ますにはお金を振り込んでもらう必要がある」と言われ、女性は名義貸しトラブルを解決する名目で、総額約4200万円をだまし取られた
引用:わずか2ヵ月半で1億円超 特殊詐欺被害
名義貸しをすると借金の返済義務も発生
また名義貸しによって、後になってから借金を背負う危険性も高いです。
例えば名義を借りた人が失踪し借金が発覚すると、その返済義務は名義人に発生します。
お金を貸した金融機関にとっては、あくまでも名義人に融資したことになっているためです。
このため連帯保証人になる場合と同じように、名義貸しの場合も借金を返す羽目になります。
仮に返済が滞った場合、ブラックリストへの登録や自己破産の危険性もあるでしょう。
このように名義貸しは、多額の借金を抱えるリスクとも隣り合わせです。
個人情報が流出・悪用される危険も
口座開設や携帯電話の契約で名義貸しした場合、個人情報が流出・悪用される危険もあります。
これは他人名義で口座や携帯電話を入手した場合、犯罪で利用されることもあるためです。
犯罪で悪用される以外にも、名簿業者を通じて闇金融や犯罪集団などの手に渡ることもあります。
名義貸しを行った場合、どの程度の罪になるのか?
名義貸しは詐欺罪が適用される行為ですが、具体的にどういうことなのでしょうか。
実は名義貸しをすることは、他人をだますことを意味しています。
そして名義貸しが詐欺罪の対象になる以上、その罪や受ける刑も比較的重いです。
名義貸しは他人をだます行為
名義貸しが詐欺になる理由は、金融機関などを名義人を語かたり利用する点にあります。
例えば金融機関がお金を貸すなどする際は、貸す相手を審査するのが一般的です。
そして普通に返済できていれば問題はないでしょう。
しかし返済が滞った場合は、金融機関からお金をだまし取ったことになります。
それは詐欺を意味するため、名義貸しは詐欺罪の適用対象となる仕組みです。
6ヶ月以下の懲役か100万円以下の罰金に
名義貸しが原因で有罪判決を受けた場合、6ヶ月以下の懲役か100万円以下の罰金刑となります。
どちらになるかについては、名義貸しの悪質さに基づいて裁判官が決めることです。
仮に刑務所での懲役を免れても、100万円の罰金は非常に大きな負担になります。
そして罰金を支払えない場合は、労役場での労働に従事する流れです。
なお労役場は日給5000円のため、罰金100万円の場合は200日も働く羽目になります。
「自分は名義を貸しただけなので、責任は負わない」という主張は、なかなか通るものではありません。名義を貸した人は、最悪の場合、借りた人には裏切られ、責任だけを負わされるという散々な目に遭うことになります。
引用:名義を貸すことの危険性
名義貸しによくあるケースとは?
名義貸しをせずに済ませるには、まず名義貸しのケースを知ることが大切です。
主に身内などから頼まれるケースと、詐欺集団が儲け話で頼むケースがあります。
身内や知人・友人から借金やカードの名義貸しを頼まれるケース
名義貸しでありがちなのが、身内や知人・友人が頼んでくるケースです。
彼らが頼んでくる動機としては、主にお金に困っているケースが挙げられます。
借入限度額を超えたりブラックリストに登録されたりするなど、金策に困っているケースです。
彼らは自身ではお金の工面が困難なため、信用ある彼らの名義で何とかしようとします。
詐欺集団が謝礼金を稼げると持ち掛けるケース
また詐欺集団が名義貸しで謝礼金が稼げると持ち掛けるケースも多いです。
「謝礼金を払う」などと言葉巧みに勧誘してきますが、後日、弁護士などを名乗る人物が「名義貸しは法に触れる。あなたは逮捕される。解決にはお金が必要」などと脅して、金銭をだまし取るニセ電話詐欺の手口の一つです。
引用:「権利を譲ってください」「名義を貸してください」にご注意!
具体的には口座開設や携帯電話の契約によって謝礼金がもらえると騙ってきます。
このケースの場合、口座や携帯電話を振り込め詐欺などの犯罪に利用されるケースも多いです。
仮に犯罪に利用された場合、名義人も共犯者として逮捕などされます。
その点では、身内から名義貸しを依頼される以上に恐ろしいケースです。
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名義貸しを頼まれた時の対策法とは?
もし親しい方から名義貸しを依頼された場合、どのように対処するべきなのでしょうか。
名義貸しを頼まれた場合の対策としては、以下に挙げられる方法があります。
ただ基本路線としては、はっきりと断るのが大前提です。
まず名義が必要な理由を聞いてみる
家族や友人などから名義を貸すよう頼まれた場合、まずは理由を尋ねます。
彼らにも名義貸しを頼まざるを得ない理由がいろいろとあるでしょう。
できるだけ詳細に事情を聴くことや、具体的な金額を把握するのがコツです。
断るのであればきっぱりと
名義貸し自体は犯罪であるため、多くの場合は事情を聴いても断るのが基本となります。
ただし断るのであれば、毅然とした態度で臨むべきです。
相手が頭を下げてお願いする姿を見ても、情にほだされるべきではありません。
何があっても絶対に名義を貸さないという姿勢で臨むことが大切です。
名義貸し以外の方法を提案してみる
名義は貸せないが何とか相手を助けたいのであれば、名義貸し以外の方法の提案してみます。
借金を返済したり、ローンを組んだりするには名義貸し以外の頼らない方法もあるためです。
具体的には債務整理や自己破産手続き、仕事の紹介など考えればいろいろとあります。
いずれにせよ、相手が名義貸しの依頼を避けられるようにほかの方法を勧めるのが得策です。
どうしても貸すのであれば現金を貸す
どうしても相手を今すぐ救いたいのであれば、手持ちの現金を貸す方法があります。
ただ手放しにお金を貸す方法では、相手と返済を巡るトラブルに発展する可能性も高いです。
お金を貸すのであれば、きちんと借用証書を作成したうえで渡すのが良いでしょう。
借用証書には貸した金額と年月日、貸し借りの人物名、返済期日・方法まで記すのが大切です。
個人間の貸し借りで大仰に感じる方もいるでしょう。しかし貸し借りが原因で関係が悪化するケースも多いです。
このため借用証書を用いて、返済についてきちんと取り決めておくべきといえます。
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会社や資格・家族間での名義貸しで借金した場合の対処法とは?
会社関係や資格関係、家族などへの名義貸しで借金した場合、どうすれば良いのでしょうか。
名義貸しによる借金の問題に対処する方法は、ケースによりさまざまです。
ここではそれぞれのケースで、名義貸しによるトラブルに対処する方法をご紹介します。
会社関係の場合でトラブルに巻き込まれたら
まず会社関係での名義貸しのトラブルは、職場絡みで多いです。
職場で事業を発展させるためということで、名義貸しを求められることがあります。
この名義貸しでトラブルに巻き込まれたら、労働問題に詳しい弁護士に相談すべきです。
合わせて警察にも相談して、しかるべき対処法をとってもらうと良いでしょう。
資格関係で名義貸しトラブルに巻き込まれたら
事業を始める場合、弁護士などのように何らかの資格が必要な場合もあります。
そして資格を持っている人の名義を借りて、資格が必要な事業に手を出す場合も多いです。
資格を持っていて名義を貸し、トラブルに巻き込まれた場合はどうすれば良いのでしょうか。
この場合も、まず基本的に弁護士や警察などに相談することが前提です。
そして一刻も早く、名義貸しをした相手に借金を返してもらうようにします。
加えて名義を貸した行為からも早々に手を引くべきでしょう。
家族の中での名義貸しで借金した場合は
家族が勝手に自分の名義でお金を借りた結果、借金を背負う羽目になることもあります。
この場合は、知らないうちに名義を使われたことを証明できれば、支払い義務はありません。
またクレジットカードや身分証を勝手に使われた場合は、盗難届を警察に出すこともできます。
たとえ家族であっても、名義貸しについては情けをかける必要はありません。
まとめ
名義貸しは自分の名義を他人に貸す行為ではあるものの、それ自体は犯罪行為です。
金融機関などを騙してお金を借りるなどすることから、詐欺罪が適用されます。
加えて名義貸しは多額の借金を背負い、人生に暗い影を落とす行為です。
たとえ知っている人に頼まれた場合でも、名義貸しはきっぱりと断るべきといえます。
名義貸し以外にできることは多いため、相手を助ける場合は他の方法を勧めると良いです。
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