おうちで自家製酒を作るのが習慣、若しくは趣味だという方はある程度おられることと思います。
もちろん今ではお酒の種類はバリエーションが非常に豊かで、割り材も数えきれないほどで飽きることはありません。
それでも梅やかりんのなる季節には梅酒やかりん酒、また普段から自分の好きな材料でお酒を造るのは生活に彩を与えてくれるでしょう。
そこでしっかりとチェックしておく必要があるのが、日本で作られたり販売されたりするお酒全般に適用される酒税法。
この記事では酒税法と照らし合わせ、お酒造りにおいて何が合法と違法を分けるラインなのかご紹介していきたいと思います。
酒税法は何のために存在するのか
どうしておうちで自由にお酒を造ることができないのか?この疑問はすなわちなぜ酒税法が存在するのかという問いとほぼ同義といえます。
酒税法が存在する意味についていくつかの側面を見ていきましょう。
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政府が税金を徴収するため
お酒は飲むもの、つまり食べ物の一種といえます。食べ物をはじめ、国民の健康や福祉を管轄する省庁は一般的には厚生労働省です。
しかしお酒について定めた酒税法の所管は財務省の外局である国税庁です。
この事実から明らかなように、お酒に関する規制は決して健康や福祉面に由来するものではなく、政府が税金を取るためなのです。
酒税法に違反することは脱税にもつながりかねない行為ということになるので注意が必要でしょう。
違法な手段によって、納税を免れる行為を脱税という。
引用:脱税|コトバンク
酒類の流通をコントロールするため
税金を確実にとるという目的にも間接的につながるのですが、酒税法にはお酒の流通ルートを制限する役割もあります。
実際、すべての商店やスーパーマーケットがお酒を取り扱っているとは限らないことにお気づきでしょうか。
これはお店それぞれの方針も関係していること以上に、酒類を販売するためには一定の条件を満たした免許が必要だからです。
免許無く酒類を販売することは当然ながら酒税法違反となり、取り締まりの対象となります。
分類を明確にするため
例えばワインについて厳格な基準を設けているフランスのように、日本でも酒税法により日本酒をはじめ酒類を細かく分類しています。
これは日本で流通するお酒の品質を守り、輸入品や密造など品質の異なるものから区別することに大きく寄与しています。
また副産物として純粋にお酒を楽しみたい人にとっても、等級や製法によって違いを見つけるのに一役買っているともいえるでしょう。
何が酒税法違反に該当?
酒税法をなぜ守らなければならないのかについておさらいしたところで、いよいよ本題です。
自家製酒を造る上で陥りやすいポイントについて見ていきましょう。
アルコール1度を超える飲料は基本すべて「お酒」
何をもって「お酒」と呼ぶかという点ですが、日本の酒税法の場合はアルコール濃度1度以上で「お酒」ということになります。
酒税法において酒類とは、アルコール分1度以上の飲料(飲用に供し得る程度まで水等を混和してそのアルコール分を薄めて1度以上の飲料とすることができるものや水等で溶解してアルコール分1度以上の飲料とすることができる粉末状のものを含みます。)をいいます。
ですから、免許なしに糖分を適切な仕方で発酵させることでアルコールを1%以上生成する行為は酒税法違反です。
自家製ぶどう酒を造ることなどは実質禁止されているということになります。
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混成酒を作る場合はアルコール20度以上
こちらのルールに関してはよくご存知でない方も多いのではないかという印象です。
ご家庭で果実酒などお酒と何かを混ぜ合わせて別のお酒を造る場合は、アルコールが20度を下回らないよう注意が必要です。
後の項目で述べますが、この点はとても注意が必要です。
混成酒に使うお酒は一種類
こちらも実は落とし穴といえますが、家庭で2種類以上のお酒を使って別のお酒を造ることも酒税法違反です。
焼酎や日本酒、みりんなどを一度に混ぜ合わせることは絶対にしないでください。
どぶろく作りは違法?
どぶろくを家庭で作ることはできるのでしょうか?
基本的には違法
この記事をご覧の方のほとんどは酒税法についてそれほど詳しくはご存じない方であるに違いありません。
結論からいえば、酒類製造免許なしで家庭でどぶろくを作ることは違法です。完全にお酒の密造になります。
ですからレシピを知っているからと興味本位で醸造することは絶対にしないでください。
条件を満たせば可能
「どうしても興味があってどぶろくを造ってみたい」と思われる方は、酒造メーカーに入社するしかないのでしょうか?
決してそのようなことはありません。
日本各地には、どぶろく特区という酒造に関する規制が緩和されている地域が存在します。
農家民宿や飲食店等を営む農業者が、自ら生産した米を原料として濁酒(どぶろく)を製造する場合には、酒税法の酒類製造免許に関する年間最低製造数量基準を適用しないもので、構造改革特区計画の認定が必要となります。
個人や小規模な事業者にとって大きな壁になっているのは、年間6キロ(6000)リットルもの膨大な最低醸造量。
これだけの量をコンスタントに作ることは非常に困難です。とても興味や思いつきでできるレベルではありません。
どぶろく特区ではこの最低醸造量に関する規制が緩和されており、その地域で消化するためのどぶろくを醸造することができます。
もちろん醸造に関するたの厳しい規制は遵守する必要があるものの、興味をお持ちの方はぜひ調べてみてはいかがでしょうか。
自家製梅酒作りの注意点
次に、家庭で梅酒など果実酒を造る時に注意すべき点を見ていきましょう。
アルコールは20度以上
家庭で果実酒を漬ける時には、必ずアルコールを20度以上と高く保つ必要があります。
一般的にそのまま飲むための焼酎などの蒸留酒は20度や25度程度が普通です。
しかし水分の豊富な果実類をこれらのお酒で漬けてしまうと、アルコールはすぐに20度を下回り酒税法違反となってしまいます。
ですので、果実酒を漬ける時にはアルコール35度程度のホワイトリカーを使用しましょう。
使用するお酒は一種類
また、家庭でお酒を作る時には2種類以上を混ぜ合わせてはいけません。
果実や氷砂糖などの材料とお酒はホワイトリカーのみに留めておきましょう。
他に日本酒やみりんなどを混ぜてしまうと、酒税法違反となってしまいますので注意してください。
サングリア作りにもご注意
近年注目度が上がったスペイン発祥のサングリア。家庭でサングリアを合法的に楽しむにも注意が必要です。
実は違法のケースが多い?
ワインに果実を混ぜ合わせて楽しむサングリア。甘さがありアルコール度数も自分好みにコントロールできると人気です。
実はお店などで提供されるものや自宅で作るためのレシピには、厳密には酒税法違反となってしまうケースが少なくないといわれています。
仮にみんながやっているからといって、違法行為を正当化することはできません。違法は違法です。
漬け置きは厳禁
サングリアの何が落とし穴なのかというと、材料となるワインのアルコール度数の低さ。どれだけ高くても14度を上回ることは稀です。
当然そのようなアルコール度数の低いワインを使って果実を漬け置きした場合、日本では酒税法違反となってしまいます。
合法的にサングリアを楽しむには、ワインと他の材料を飲む直前で混ぜ合わせる必要があります。
もし万が一漬け置きを含むレシピをネットや本などで見かけた場合は、絶対にそのレシピでサングリアを作らないでください。
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まとめ
料理を趣味として楽しむという方は決して少なくないに違いありません。
そして普段の料理で法律の壁に直面するというケースも極めて稀です。大抵の場合、食材を自分の好きな調理方法で扱うことができます。
しかし数ある飲食物の中でお酒は例外といえるでしょう。法律の縛りが非常に強い飲み物です。
酒税法についてあまり詳しく調べたことがなかった方にとっては、この記事の内容は驚きが多かったのではないでしょうか。
どうぞこの記事を参考にして法律を遵守しながらお酒を楽しんでください。