偽札を製造したり使用したりすることは、法律で禁止されている行為です。
しかし、銀行でお金をおろす時やコンビニやスーパーでお釣りを受け取る時など、お金に触れる機会は日常にたくさんあります。
誰にも気付かれずに出回っている偽札がいつ自分の手に回ってくるのかわかりません。
この記事では、偽札と知らずに使用した場合は犯罪になるのか、自分で偽札を見分けるにはどうすれば良いのかなどをご紹介します。
偽札事件は昔から起こっていた
2000年代になってからよく聞くようになった偽札事件ですが、実は昔から偽札をめぐる事件は数多く発生しています。
謎のニセ札事件
1954年に日本で実際に起こった偽札事件で、被害の大きさではなく事件の内容が不思議すぎるということで話題になりました。
東京都内の印刷所に興信所の関係者と名乗る男が現れ、紙幣の印刷を注文。しかし警察の調査の結果、男性が所属している興信所は存在しておらず、印刷所の職員が印刷物を日本銀行に持っていっても「この紙幣は存在しない」との回答だった。紙幣には解読できない謎の文字が書かれていて、いまだにこの事件は解決していない。
チー37号事件
この「チー37号事件」は1961年に秋田県で起きた偽札製造の事件です。60年近く経った今でも解決していません。
秋田県内の銀行で偽の千円札が発見されたことがきっかけとなり、合計343枚の同様の偽の千円札が他の都道府県から発見された。手触りや紙幣の分厚さに若干お違いはあったものの、本物そっくりに作られていた。
1960年代から、かなり精密に作られた偽札が出回っていたことがわかりますね。
通貨偽造の流通は減少している
2004年には25,000枚もの偽札が発見されましたが、2018年には3,000枚以下に減少しており、偽造通貨の流通は年々減少傾向です。
偽造通貨が減少している大きな理由として、紙幣を印刷するときにいくつもの特殊技術を使用していることが挙げられます。
定期的に紙幣のデザインが変更されますが、変更のたびにより高度な印刷技術が取り入れられるようになりました。
つまり、このことから偽札や偽貨が作りにくくなっていったと考えられます。
日本における偽札使用の防止策
世界でもトップクラスの印刷技術で紙幣の製造をしている日本です。
では、偽札製造・使用防止のために具体的にはどのような技術が使われているのでしょうか。
現在発行されている紙幣の偽札使用防止策
2020年現在で最新の紙幣は、触った時、すかした時、傾けた時に、偽札か本物かを判別できるようになっています。
紙幣を触ると凹凸があるのが分かると思います。
この凹凸には、「凹版印刷」や「深凹版印刷」と呼ばれる特殊技術が使用されているのです。
この印刷技術のおかげで、偽札を判別するだけでなく、目の不自由な方でもお札の種類を判断できるというメリットもあります。
紙幣をすかした時に、中央の円に肖像画が浮かび上がるのはご存知の方も多いでしょう。
このすかしは「すきいれ(白黒すかし)」と呼ばれていて、紙の厚さを変更することですかしが入るような仕組みです。
さらに一万円札と五千円札の左下には、ホログラムと呼ばれるものが入っています。
銀色の楕円形のもので、紙幣を傾けると数字や絵が浮かび上がります。
このホログラムも、偽札か本物か判別するための技術なのです。
定期的に紙幣のデザインを変更するのも偽札使用を防ぐため
2024年に新紙幣が発行されることが決まりましたが、過去にも定期的に紙幣や硬貨のデザインは変更されています。
偽札の製造を防ぐことが大きな理由で、新紙幣には、また新しい最新の印刷技術が取り入れられる予定です。
ちなみに、新しい紙幣が発行されても、現在の紙幣が使用できなくなることはありません。
「今の紙幣が使えなくなるから買い取ります」と、お金を騙し取ろうとする連絡には注意しましょう。
偽札を使ってしまった場合の罰則
偽札・偽貨の製造や使用は刑法で禁じられている
偽札や偽貨の製造・使用は刑法で禁止されている行為です。
また、海外で作られた偽札・偽貨を日本に持ち込む行為や、紙幣や硬貨と似た見た目のものを製造することも禁止されています。
偽札・偽貨の製造や使用に関する罰則
刑法では、通貨偽造の犯罪について、以下のように定められています。
通貨偽造罪
通貨偽造罪とは、行使の目的で、通用する貨幣、紙幣又は銀行券を偽造又は変造することを内容とする罪(148条1項)。日本国外において犯したすべての者にも適用される(2条4号、講学上のいわゆる保護主義)。無期又は3年以上の懲役に処すると、規定している。
当然ながら使用する目的での偽造は違法です。
偽造通貨行使等罪
偽造通貨行使等罪は、偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入する行為を内容とする(148条2項)。
自分で使う目的でなくとも、人に売りさばいたり使わせたりすることも禁止されています。
収得後知情行使罪
貨幣・紙幣などを受け取った後で偽造の物と知り、あえてそれを使ったり他人に渡したりする罪。使った額面の3倍以下(最低2001円)の罰金または科料に処せられる(152条)。
手にしたものが偽造だと知りながら使う行為等も罰せられます。
偽札と本物の紙幣を見分ける方法
偽札と本物の紙幣を見分けるにはいくつかの方法があります。
最も簡単なのはお札のすかし部分や、ホログラムを確認することです。
本物の紙幣に印刷されているすかしは、偉人の頭髪やひげなど、細かい部分もはっきり確認することができます。
では、お札の種類ごとの判別方法をご紹介しましょう。
ぜひ手元にあるお札を確認しながら読んでみてください。
千円札
千円札にはホログラムがありません。ですので、透かし部分や凹版印刷をチェックしましょう。
紙幣の上部にある「1000」という数字を触ると、他の部分よりも出っ張っているのが分かります。
左右の下の角には横棒のようなマークがあるのですが、これは目の不自由な方でもお札の判別ができるようにするための仕組みです。
この横棒部分も、平らなところと比較すると厚みがあります。
五千円札、一万円札
五千円札と一万円札は、ホログラム、すかし部分、凹版印刷を確認しましょう。
ホログラム部分は紙幣の角度を変えると、どちらも3種類の絵柄が浮かび上がってきます。
実際に見てみると五千円札の左右の下の角には黒丸が1つ、一万円札の左右の下の角には大文字のLのようなマークがあるのが分かるでしょう。
本物のお札はこれらのマークが凹凸になっているのです。
偽札かを判定してくれるグッズを持っておくのも対策のひとつ
手ごろなグッズのひとつに偽札チェックペンがあります。
このペンで本物の紙幣に文字を書くとインクの色が透明になり、偽札だと書いた部分に色が残るため偽札の判別ができるというものです。
不安な方は、このような対策グッズを用意しておくのもひとつの手です。
手元に偽札があったらどうすればいい?
「偽札を使って買い物をしよう」「偽札を誰かに売ろう」などと思っている人は少ないと思います。
しかし、「たまたま手に渡ったものが偽札だった場合、罪に問われるのか」ということは気になる方も多いのではないでしょうか。
自分が罪を犯さないために、偽札に気づいたときの対処方法をご紹介します。
「知らない間に財布に偽札が入っていた」のは罪に問われる?
自分で使用することや販売を目的として、偽札や偽貨を製造することは明らかな法律違反です。
しかし、受け取ったお釣りの中に偽札・偽貨が混ざっていたなど、意図せず偽造通貨を手にしてしまった場合は刑法違反になるのでしょうか?
結論をお伝えすると、意図しないところで偽札や偽貨を受け取っていた場合、法律違反にはなりません。
罪に問われるか問われないかを考える時に重要になるのが、「犯罪をする意思があったかどうか」です。
上記の状況では本人は偽札を使ったり他の誰かに販売したりすることを目的として所持しているわけではありません。
ですので、罪に問われることはないというわけです。
持っている紙幣が偽札だと気付いたら・・・
もしも、自分が持っている紙幣が偽札だと分かった場合は、すぐに近くの警察か銀行に届け出ましょう。
偽札だと分かっていながらそれを使用することは、偽造通貨取得後知情行使罪(警報152条)違反です。
また、偽札だと分かっていながらその紙幣を両替したり別の紙幣に交換したりする行為も犯罪となります。
罪に問われる前に、怪しいと思ったらすぐに警察か銀行に届け出るのが一番です。
届け出たら本物の紙幣と交換してもらえる?謝礼はもらえるの?
「偽造通貨発券届け出者に対する協力謝金制度」というものが存在しています。
この制度は警察の捜査に協力したら謝礼を受け取れるというものです。
ですので、偽札を届け出たからといって必ずしも本物の紙幣と交換してもらえるわけではありません。
しかし、偽札製造の犯人が逮捕された場合は、犯人に被害について請求することができます。
まとめ
自分が罪を犯さないためには、偽札に気づいたらすぐに警察や銀行に届け出ることが最も重要です。
偽札に気づくために、今回ご紹介した偽札と本物の紙幣の見分け方を参考にしていただければと思います。
偽札の枚数が年々減少していることは事実ですが、いつ自分のもとに回ってくるかわかりません。
「私に限ってそんなことはないだろう」と思わずに、偽札を手にする危険が近くにあることを頭に入れておきましょう。
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