世の中にはありとあらゆる法律がありますが、もちろんそのすべてを徹底的に網羅しているのは司法などに関わる人に限られるでしょう。
しかし法律違反を知っていたかどうかは関係ありません。法律はいわば知っていた者勝ちなのです。
そのように私たちの生活に非常にかかわりが深くもあまりよく知られていない法律の一つが薬事法です。
薬事法ときいて、製薬会社や販売にかかわる人に向けた法律だと思いがちかもしれませんが、実はそんなことはありません。
知らないでいると後でとんでもないことになるような重要な法律のひとつなのです
この記事では薬事法が私たちの生活にどう影響しているのかを知り、遵守するためのお手伝いを致します。
薬事法の存在意義
実際のところ、薬事法という法律の名前を聞いたところで、ピンと来ない方は少なくないかもしれません。
まずは薬事法が私たちのために何をしてくれているのかを知りましょう。
医薬品や食品の安全を守るため
プラシーボ効果という言葉を耳にしたことのある方は少なくないかもしれません。
偽の薬でも騙されて効果を信じながら飲むと本当にその効果が表れるというもの。
しかしながら実際に医薬品の効果を偽るなど製薬や販売の過程では絶対にあってはなりません。
薬事法は何が医薬品、医薬部外品または健康食品で何が該当しないのか、どの薬にどの効果が求められるべきなのかなどを定めています。
私たちが本当にその薬を信じて使うための根拠を提供してくれているのが、他ならぬ薬事法なのです。
広告を規制するため
薬の効果を偽ることについて言及しましたが、この点で非常に重要な分野が広告です。
広告表現次第で私たちはその商品を手に取り購入、使用を決めます。
医薬品、健康食品や化粧品の成分について正しい表現をするのはもちろんのこと、その効能に関して決して偽ることがあってはいけません。
誰でも薬事法により定められた範囲で適切な広告表現を用いる必要があるのです。
他にも大きな役割を果たしている薬事法
もちろん薬事法は私たちの健康に関わる非常に重要な役割を果たしてくれています。
医薬品や医療機器の進歩は当然医学の進歩と切っては切れない関係にありますが、それを促進しているのは薬事法です。
近年の新たな分野である再生医療に関しても方向性を定めているのはこの法律です。
購入者も気をつける必要がある
薬事法違反はないに超したことはありませんが、何かしら病気を抱えがちな人間である以上巻き込まれる可能性はゼロではありません。
明らかに間違った表示がされている商品が売られることはもちろん、違法な流通ルートで購入してしまうこともあり得ます。
薬事法という法律がある以上、私たちはそれを遵守する責任があり、そうするための対策を講じることが必要です。
具体的にどのような違反があるのか、また個人レベルでも譲渡や転売に関し留意すべき点について見ていきましょう。
違反事例
薬事法に違反する場合、どのようなケースが当てはまるのでしょうか。いくつか例を見てみましょう。
無許可販売
医薬品や医薬部外品、健康器具を法律上の許可なく販売することはできません。
また処方箋が必要な医薬品を医師の処方箋無しに販売することも禁止されています。
さらには海外で承認されている医薬品であっても日本で未承認のものは、広告を出すことも販売することも禁止されています。
これらの行為を見つけたなら、通報することが必要です。
誤った広告表現
当然ながら、間違った情報に基づく広告表現を使うのは違法です。
商品の製造者は、ほとんどの場合商品開発時に多大なる労力を費やしながら非常に多くの規制をクリアして販売までこぎつけています。
商品のパッケージに表示される文言も一つ一つの表現を規制に触れないか慎重にチェックしています。
例えば、医薬品ではないのに医薬品のような効能があるかのように消費者に誤解させるような表現はNGです。
販売後のトラブルを収めるには相当な労力が余計にかかりますから、販売までにそのようにして念入りなチェックを重ねるのです。
誇大広告
消費者に過度の期待を抱かせるような誇張した広告表現も違法です。
実際この広告表現はどこまでがOKなのか線引きが非常に難しく、特に敏感であるべき分野といえるでしょう。
特に、明示であれ暗示であれ健康増進や医学的効能に関する表現には細心の注意を要します。
転売・譲渡の注意点
転売や譲渡で薬事法に違反する場合があるというのは本当なのでしょうか。
医業として成り立っているかどうか
前述の通り医薬品を販売することは本来許可が必要で、基本的には自由に転売することにはリスクが伴います。
何をもって違法とされるかというと、販売業として成り立っているかどうか。
1回であろうと複数回であろうと、転売を仕事として行う意思があるならそれは販売業として扱われることになります。
そのような販売業は本来許認可を受けた事業者が行うべきものですから、個人で行っていると逮捕される可能性があります。
ですから、薬が余ったなどの理由以外では転売することはあまり勧められません。
処方箋の必要な医薬品の譲渡は?
処方箋の必要な医薬品は、本来その薬が必要な健康状態かどうかを医師が判断した上で処方されるべきものです。
実際のところこれらの医薬品を譲渡した時点で即薬事法の違反にはなりません。
しかしそのような医薬品を友人などの代わりに買い譲渡する行為は、少なからずリスクが生じることを覚えておきましょう。
もしかするとすでに服用している薬との飲み合わせや、持病などに伴う思わぬ副作用など、予期せぬ危険が伴うからです。
また薬の種類によっては薬事法によってではなく麻薬及び向精神薬取締法に抵触し逮捕される可能性はあります。
違反を見つけた時には通報を
もしも薬事法に違反している業者やサイトを発見したら、どこに通報すればいいのでしょうか。
住所が分かるなら各自治体へ
もしもインターネットのホームページ上などで事業者の住所を知ることができるなら、所在する自治体に連絡しましょう。
事業者の住所のある都道府県、保健所設置市又は特別区に連絡することができます。
住所が分からない場合は
違反する事業者の住所が分からなかったり、海外の業者が販売している場合もあるかもしれません。
そんな場合には、厚生労働省が定める下記の連絡先に通報することができます。
- ア.「あやしいヤクブツ連絡ネット」に電話で連絡。
連絡先 : 03-5542-1865- イ.厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課にメールで連絡。
下記を参考にメールを作成してください。
メールアドレス:yakuji-net@mhlw.go.jp引用元:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/topics/tp131111-01_1.html
メールを作成する場合にはテンプレートも用意されているので、必要であれば厚生労働省のホームページをのぞいてみましょう。
まとめ
私たちは何かを食べたり服用することで健康と生命を維持しています。
この口に入れて取り入れる、という行為を避けて生きていくことは特殊な状況を除き不可能なことです。
命を維持するそのような分野に深くかかわっている薬事法という法律が私たちにとっていかに重要かお分かりいただけたかと思います。
日本での医療や食の安全が非常に高いレベルで保たれているのはこの法律がしっかりと機能しているお陰に他なりません。
それだけに私たちはこの法律を一人一人がしっかりと理解し、遵守していく必要があるのです。