ひと昔前は会社に喫煙所があり、バスの座席に灰皿があり、新幹線には喫煙車両があり、車内は煙で白くかすんでいました。
ところが昨今は新幹線の車内どころか、駅のホームからも灰皿が消え、社内の喫煙所もなくなりました。
そして多くの自治体、特に都市部では路上喫煙禁止地区を設けています。
なぜ路上喫煙を禁止しているのでしょうか? 立ち止まって吸うのならいいのでしょうか? 電子タバコは?
今回は、路上喫煙禁止の理由・路上喫煙防止のための自治体の対応・路上喫煙を注意する際の注意について解説していきます。
路上喫煙と歩行喫煙の違い
路上喫煙とは、以下のような状態でタバコを吸うことです。
(参考:大坂市「なくそう、迷惑タバコ」)
- 歩きながら吸う
- 立ち止まって吸う
- 携帯灰皿を利用して吸う
- 自転車をこぎながら吸う
- バイクを運転しながら吸う
大坂市の定義によると、歩行喫煙は路上喫煙に含まれています。
しかし東京23区では区によって「歩行喫煙は禁止だが、立ち止まって吸うのはOK」など、対応がまちまちなのが現状です。
地域による路上喫煙の扱いの違い
各自治体によって条例がまちまちであり、それが喫煙者が混乱してしまう原因にもなっています。
東京都・千代田区
路上禁煙条例が施行されて11年、区内全域が路上での喫煙禁止です。
しかし、立ち止まって吸うのはOKです。
東京都・墨田区
以下の歩行喫煙を禁止しています。
- 歩きながらの喫煙
- 走りながらの喫煙 (いるの?)
- 自転車・バイクでの喫煙
しかしここも、立ち止まってのタバコは問題ありません。
- 立ち止まっての禁煙は、駅周辺など推進地区以外はOK
墨田区のようなケースは多いのです。
東京都・中央区
「歩きタバコは禁止」
灰皿のない路上での喫煙もNG、携帯灰皿もNG
中央区は歩きタバコも立ち止まってもダメです。
結局、自治体によって違うため、旅行に行く際などは確認していったほうが良いでしょう。
加熱式タバコはどうなの?
代表的な加熱式タバコにiQOS(アイコス)があります。
中身は高温(300度)ですが、外側は熱くないため火傷はしません。副流煙がなく、主流煙にもタールが9割少ないようです。
プルーム・テックも代表的な加熱式タバコです。
こちらは内部で40度に温めるだけの低温です。ニコチンはほとんど含まれておらずタールにいたってはゼロ、火傷の心配もありません。
このような加熱式タバコはどうなのでしょうか?
東京都は
結論からいいますと、加熱式タバコも自治体によりまちまちです。
東京都では新宿区・墨田区をはじめ、16区で許可されています。
反対に、東京都大田区・荒川区など7区では許可されていません。
他の都市ではどうでしょうか?
名古屋・大阪・福岡
名古屋市
条例の趣旨が火傷被害やポイ捨て防止のため、加熱式タバコに罰則はありません。
大坂市
条例の規制対象ではありません。
北九州市
条例の規制対象ではありません。
しかし、どちらも「現段階では」との注意がついているため、将来変わってくる可能性があります。
各自治体の路上喫煙禁止条例
路上喫煙を防止するための法律についは、各自治体バラバラの名称となっていますが、ひっくるめて「路上喫煙禁止条例」と呼びます。
路上喫煙禁止条例とは
路上でのタバコの喫煙行為をなくすことを主な目的とした日本の条例の総称である。
路上喫煙禁止条例は、「路上での喫煙を規制」する条文、または「歩行中の喫煙を規制」する条文が含まれた条例の総称
事例によって「環境条例」や「歩行喫煙禁止条例」など様々な名称の条例が含まれる。
過料(罰則)を納付させる自治体
その場で過料と納付させるか、現金がなければ後日銀行振り込みとなります。金額は以下のように1,000円~2,000円です。
- 東京都・千代田区:2,000円
- 東京都・品川区 :10,000円以下 (1,000円が多い)
- 東京都・大田区 :10,000円以下 (1,000円が多い)
- 東京都・杉並区 :20,000円以下 (2,000円が多い)
- 東京都・板橋区 :10,000円以下(当分保留されている)
実際には罰則を集めるための見回りの人件費で赤字になっています。
過料(罰則)のない条例の自治体
以下の自治体は喫煙は禁止はしていますが罰則はありません。
- 東京都・中央区:歩きたばこ・ポイ捨てを禁止、灰皿のない場所での喫煙は禁止
- 東京都・新宿区:歩きタバコを禁止、ポイ捨ては20,000円以下の罰金
- 東京都・文京区:公共の場所で歩きたばことポイ捨て、喫煙場所以外での路上喫煙は禁止
ルールとしている自治体
以下の自治体もルール上、喫煙禁止にしていますが罰則はありません。
- 東京都・渋谷区:分煙ルール重点地区での喫煙所や灰皿のない場所での喫煙禁止
ポイ捨てを規制する自治体
以下の自治体はマナー向上の条例のみです。
- 東京都・江東区:ポイ捨てを禁止する条例でマナー向上を目的とする
自治体によって様々な条例となっています。
各自治体が路上喫煙の防止に努めていますが、完全にはなくならないようです。
路上喫煙禁止の理由
多くの自治体が、人が集まる繁華街の路上喫煙を禁止にしています。
その理由は、様々な害があるからです。
路上喫煙による害とは、一体どのようなものがあるのでしょうか。
受動喫煙による害
路上喫煙により、不特定多数の人に受動喫煙が発生します。
周りの人が、たばこの「副流煙」と喫煙者が吐く「呼出煙」による受動喫煙の害にさらされます。
副流煙はタバコのフィルターを通さないため、喫煙者が吸う主流煙より多くの有害物質が含まれます。
- 肺がん
- 脳卒中
- タバコアレルギー(受動喫煙症)の人が副流煙を吸うと、呼吸困難などで救急車を呼ぶ事態になる。
このような害を他人に与えることになります。
タバコの煙は目に見える白い部分が10%、90%は目に見えません。
そして発がん物質の含まれるタバコの煙は、最低7メートル先に届きます。
本人は気がつかなくても、小さな子供や妊婦の方へ煙が流れているのです。
やけどなどの害
火のついたタバコの先は、700度~800度にもなります。
喫煙者は、800度の火を手に持っていることになります。凶器を持っているのと同じです。
「たばこ持つ手は、子供の顔の高さだった。」という名言がJTマナーグラフィック※1にありますね。
※1 JTマナーグラフィック:JTの緑色の広告
以下のような事例もあります。
- タバコが当たって服が焦げた
- 男の子の耳を火傷した
- たばこが幼女のまぶたに当たり、救急搬送された例もあります
子供は走り回るため「気づかないうちに当たってしまう」可能性があります。
また、夏場はみな半袖のため、タバコが当たると火傷する可能性が高くなります。
ポイ捨てによる環境への害
タバコのフィルターはプラスチックなどを加工して作られています。
分解されるまで何年もかかるため、毒物を含んだまま環境を汚染します。
海や川に落ちたタバコは魚が食べる例もあり、その魚を人間が食べてしまうこともあります。
まて、海のごみの4分の1がタバコの吸い殻です。
そして、火災・山火事の原因になることもあります。
さらに、街が汚くなります。
「窓ガラスが割れたの放っておいたら街の治安が悪くなる」ことが証明されています。
同様にタバコがポイ捨てされている現場には次の人がポイ捨てします。
ポイ捨ては犯罪
タバコのポイ捨ては一般ごみの不法投棄と同じ扱いになります。
廃棄物処理法に抵触します。
軽犯罪法違反にもなります。
車からポイ捨てすると、道路交通法違反となります。
処罰の対象になります。
これらの害を防ぐため、各自治体が路上喫煙を防止するための条例を施行しています。
路上喫煙そのものは犯罪ではない
しかし、自治体の条例に反して路上喫煙をしたからといって、警察官に逮捕される訳ではありません。
地方自治体の条例で路上喫煙に罰金を科している所もありますが、それは「過料」という行政罰であり、刑事罰(犯罪)ではないのです。
警察官の業務対象外となります。
路上喫煙を防止するには
路上喫煙を防止するには以下のような事が考えられます。
- この記事を読んで、タバコマナーの向上に努める
- 条例を法律化して、軽犯罪法にする
- 喫煙所を増やす
実際には次々と喫煙場所が消えていき、タバコマナーを守りたくても喫煙場所が無い。
そのため条例違反と知りながらも建物の陰に隠れて吸う人がいます。
また、病院で3時間も待たされ、我慢できずに敷地外に出て路上喫煙したりなど、いたしかたなく条例違反をしてしまうケースがあるのです。
灰皿や喫煙所の減らしすぎで逆に路上喫煙が増えていると考えられます。
路上喫煙を注意する際に気を付けるべきポイント
路上喫煙を注意してトラブルになることに気をつけなければなりません。以下は実際に起きたトラブルです。
・ANNニュースより
東京・豊島区
路上での喫煙を注意されたことに腹を立てて40代の男性に暴行を加えて重傷を負わせたとして、20歳の大学生の男が逮捕
ANNニュース より引用
・産経新聞ニュースより
路上喫煙注意され鉄パイプで暴行か 殺人未遂疑い父子逮捕
男性が路上喫煙していた少年を注意したところ、少年から連絡を受けた父親が鉄パイプを持って現れ、2人で男性を襲ったとみられる。
産経新聞ニュース より引用
・大阪市ホームページより
私は、この2019年3月内に京橋路上喫煙禁止区域内での路上喫煙・歩きタバコを8人見ました。
私は上記の内、4人に声を掛け注意しました。その結果は、2人が無視。
もう2人は「他の奴も吸っとるわ!」や「なんか文句あんのかい!」と逆ギレされました。
大阪市ホームページより引用
素直に注意を聞き入れる人もいるでしょうが、上記のニュースのように身の危険があるかもしれません。
警察官に頼るのが一番安全ですが、冒頭に述べたように「警察官の業務外」のです。
もしかしたら注意だけはしてくれるかもしれません。しかし犯罪ではないため、強制力がないのです。
路上喫煙見回り担当者が側にいれば良いのですが、たまに見かける程度です。
注意すると逆ギレ、暴行されるケースがあるため、上から目線で注意するのは避けましょう。
下手にでてお願いするような形で相手を怒らせない配慮が必要です。
まとめ
喫煙者はニコチン依存症のため、定期的に吸いたくなるのが心情です。
マナーやモラルより、ニコチンという薬物の依存欲求を満たすほうが勝ってしまうのです。
路上喫煙の防止条例の罰則があっても守らない人は後をたちません。
しかし、禁煙の飲食店の店内で吸う人は見かけません。外の灰皿で吸っているのです。
同様に、路上喫煙を減らすことは可能だと考えられます。
- 路上喫煙禁止の啓蒙活動を増やす
- 適切に喫煙所を設ける
- タバコの販売を減らしニコチン依存者を少なくする
- 条例を法律化して強制力をもたせる
などの方法で路上喫煙を防止できるでしょう。
喫煙家の方は、タバコマナーを守るよう努力しましょう。