強引な訪問販売やしつこい電話勧誘で商品を購入してしまったり、契約の申込みをしてしまったりした経験はありませんか?
後から冷静になって考えてみて「必要のないものだった…」と後悔したことのある人は少なくないのではないでしょうか。
そんなときに頭をよぎるのがクーリングオフという返品制度です。
クーリング・オフは、いったん契約の申し込みや契約の締結をした場合でも、契約を再考できるようにし、一定の期間であれば無条件で契約の申し込みを撤回したり、契約を解除したりできる制度です。
引用:クーリング・オフってなに?(国民生活センター)
名前は知っていても実際に利用したことがないため、いつ・どんな商品に・どのような手続きを行えばいいのか分からないことも。
この記事では、クーリングオフで悪質商法から身を守る方法を徹底解説。
クーリングオフできるものとできないもの、クーリングオフの手続き方法についてご説明します。
必要となる通知書面の書き方や相談先についてもご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
クーリングオフができる取引と期間
クーリングオフは一方的に契約を解除できる制度なので、すべての商品やサービスに適用されるわけではありません。
また、クーリングオフが適用される期間も決まっています。
以下に特定商取引法で定められたクーリングオフができる取引と期間をまとめました。
訪問販売
セールスマンが自宅に訪問して店舗外で契約をする訪問販売は、クーリングオフの典型的な取引と言えるでしょう。
引っ越し当日、業者が換気扇フィルターの勧誘に訪れた。管理会社と関連があるような口ぶり。約3万円を現金で支払い、その後、管理会社に確認すると無関係とわかった。
引用:引っ越し当日ねらう訪問販売詐欺急増
街頭で誘われて店舗に案内された場合や、販売目的を隠して店舗に呼び出された場合も訪問販売に該当します。
そのほか、訪問販売には催眠商法なども含まれており、クーリングオフができる期間は8日間となっています。
電話勧誘販売
業者から電話で勧誘を受けたり電話をかけさせられたりした場合に契約した取引もクーリングオフの対象です。
この電話勧誘販売と呼ばれる取引は訪問販売と同じく不意打ち性の高い取引なので、冷静な判断ができずに契約したとみなされます。
電話勧誘販売のクーリングオフ期間も訪問販売と同様、8日間になります。
数年前、電話勧誘を受けて資格講座の教材を購入。最近になって『以前契約した資格講座が終了していない。新たな講座49万円を契約すれば終了したことにする』と電話があった。
→もし契約してしまっても、契約書面を受け取ってから8日以内であれば、クーリングオフ制度により無条件で解除できます。
引用:資格商法の二次被害「新たな講座49万円契約すれば終了」
訪問購入
訪問購入とは、買い取り業者が売り主の自宅などに足を運んで商品の買い取りを行う取引のことを指します。
訪問購入のクーリングオフ期間は8日間で、期間内であれば買い取り業者に対して売却商品の引き渡しを拒否することが可能です。
関連アポイントメントセールスの断り方を解説!訪問販売の種類や手口は?
特定継続的役務提供
エステ・美容医療・語学教室・学習塾・家庭教師・パソコン教室・結婚相手紹介サービスなどもクーリングオフの対象です。
これらの取引は継続的に提供される契約なので、特定商取引法では特定継続的役務提供と呼ばれています。
特定継続的役務提供のクーリングオフ期間は8日間です。
サービスの利用期間が1カ月を超え、総額が5万円を超えるエステティックの契約は、特定商取引法の「特定継続的役務提供」に該当し、クーリングオフ制度が適用されます。
引用:エステの中途解約は?
連鎖販売取引
友人や知り合いなどをターゲットに、会員を募集しながら商品やサービスを販売する連鎖販売取引もクーリングオフの対象です。
この取引はもうけ話に多く、マルチ商法とも呼ばれています。
連鎖販売取引(マルチ商法)のクーリングオフ期間は20日間です。
関連マルチ商法の違法性と勧誘の断り方 | 誘われやすい人の特徴は?
業務提供誘引販売取引
業務提供誘引販売取引とは、悪質商法の分類としては内職商法やモニター商法と呼ばれる取引になります。
業者が提供したりあっせんしたりする仕事で収入が得られると勧誘し、仕事に必要な商品やサービスの金銭負担をさせる取引です。
業務提供誘引販売取引のクーリングオフ期間は連鎖販売取引と同じく20日間になります。
「初回無料」「お試し価格500円」の広告を見て、1回限りの購入だと思って申し込んだところ、実際は複数回購入が「初回無料」の条件となっており、高額な料金を請求された。
引用:ネット通販「健康食品と化粧品」悪質業者の巧妙な手口
クーリングオフできない取引
特定継続的役務提供に該当するものを除き、消費者が店舗に出向いて契約をした場合や通信販売はクーリングオフができません。
通信販売で返品の可否や条件についての特約がある場合はその特約に従います。
通信販売には、クーリング・オフ制度はありません。返品については事業者が決めた特約(返品特約)に従うことになります。
引用:えっ!通信販売 クーリング・オフできないの?(国民生活センター)
特約がない場合は、商品を受け取った日を含めて8日以内であれば返品可能ですが、返品にかかる送料は消費者負担になります。
また、総額3,000円未満の現金取引や、化粧品や健康食品などの消耗品を使用・消費した場合も適用外です。
それから、路上で勧誘されて飲食店やマッサージ店、カラオケボックスや海上タクシーを利用した場合も対象外になります。
自動車を購入した場合やリースした場合もクーリングオフができません。
クーリングオフの手続き方法
クーリングオフの手続きはハガキなどの書面で行わなければなりません。
商品やサービスを契約した業者の代表者に対して、クーリングオフをしたい旨を書いた書面を送ります。
書面を送る際はハガキの両面をコピーしたり、特定記録郵便や簡易書留で送るなどして記録に残しておきましょう。
また、クレジットで契約をした場合は、クレジット会社にもクーリングオフの通知を送るようにしてください。
悪質商法を行う業者は、「書面など受け取っていない」とクーリングオフ逃れをしてくる可能性があります。
クーリングオフを申し出たという確実な証拠を残すためには、内容証明郵便を使うのがおすすめです。
クーリングオフの通知書面の書き方
クーリングオフを申し出る場合、書面にはどのような内容を記載すればいいのでしょうか?
クレジット契約をした場合は、業者だけでなくクレジット会社にも通知を送る必要があります。
つぎは、クーリングオフの通知書面の書き方をご紹介します。
業者あての書面に記載する内容
業者あての書面には次のような事項を記載します。
- 表題「契約解除通知書」
- 契約した年月日
- 販売会社名・営業所名・担当者名など
- 本文「上記(右記)日付の契約を解除(申込みを撤回)します」
- 通知を出した年月日
- 消費者の住所
- 消費者の氏名
本文に追加として、「支払い済みの代金○○円を返金し、商品を引き取ってください」と記入しておくと良いでしょう。
クレジット会社あての書面に記載する内容
クレジット契約をした場合は、業者あての書面に加えてクレジット会社あてに次のような事項を記載します。
- 表題「契約解除通知書」
- 契約した年月日
- 買った商品や契約したサービス名
- 販売会社名・営業所名・担当者名
- 本文「上記(右記)日付の契約を解除します」
- 通知を出した年月日
- 消費者の住所
- 消費者の氏名
内容証明郵便に記載する内容
内容証明郵便は、1行20字以内で1枚26行以内というように字数や行数が決められています。
内容証明郵便用紙というものが文房具店で販売されているので、そちらを使用すると便利でしょう。
内容証明郵便に記載する内容も、業者あての書面に記載する内容とほぼ変わりません。
字数や行数の規定に収まるように、必要なことを簡潔にまとめて記載するようにしましょう。
クレジット契約を結んだ場合はクレジット会社にも同様の通知を送ることを忘れずに行ってください。
書き方や手続き方法が分からない場合は、消費者生活センターへ相談するようにしましょう。
クーリングオフの相談先
クーリングオフは身近な制度ではあるものの、実際にこの制度を利用する機会はそれほどないため不安も多いことでしょう。
悪質な業者によっては対応をしてくれなかったり返金をしてくれなかったりする場合もあるといいます。
そのようなときに頼りになるクーリングオフの相談先をご紹介します。
消費者生活センター
クーリングオフができるかどうか迷った場合は、自治体の消費者生活センターへ相談しましょう。
自治体の消費者生活センターが分からないときは、「消費者ホットライン」188に電話すると消費生活相談窓口を案内してくれます。
関連消費者ホットライン(188)の活用法 | 対応可能な相談内容や188の日の活動も
クーリングオフ・ネット
悪質商法の解約や契約解除の手続きを代行してくれるサービス、クーリングオフ・ネットを利用するのもおすすめです。
悪質商法問題に精通した行政書士が、内容証明郵便によって迅速かつ確実にクーリングオフを代行してくれます。
万が一クーリングオフができない場合も、それ以外の適切な方法を提案してくれるので安心です。
まとめ
悪質商法にだまされて高額な商品を買ってしまったり不要なサービスを契約してしまったりすることは誰にでも起こり得ることです。
そのような場合でもクーリングオフ期間であれば契約そのものをなかったことにでき、支払ったお金も返してもらえます。
クーリングオフができない契約であっても解約・救済制度はほかにもあるので、なるべく早く専門機関に相談するようにしましょう。
悪質商法に泣き寝入りせず、最後まであきらめないことが大切です。