ニュースで度々目にする生活保護の不正受給。
生活保護費を不正に受給するという問題は年々増加しています。
生活保護費を受け取っている受給者の中には、生活保護の制度自体を詳しく知らない場合もあるようです。
そこでこの記事では、生活保護を不正受給しないための対策法を徹底解説。
不正受給に該当してしまった場合の罰則やリスクをお伝えした上で、生活保護を受給するときの注意点もご紹介します。
生活保護の不正受給とは
生活保護は、憲法でも定められているように健康で文化的な最低限度の生活を保障する制度です。
ですが、生活に困窮するすべての人に受給資格が与えられるわけではなく、一定の条件を満たす必要があります。
生活保護を受けるには、生活保護法にある以下の条件をすべて満たす必要があります。
- 預貯金や生活に利用していない土地・家屋などの資産をもっていない
- 何らかの理由があって働くことができない
- 生活保護以外の公的な制度を受けることができない
- 親族などの身内から援助を受けることができない
以上の条件をすべて満たしたうえで、本人または世帯の収入が最低生活費を下回る場合に生活保護が受けられます。
一方、生活保護の不正受給とは、事実と異なる内容を申告したり不正な手段を使ったりして生活保護費を受け取ることを指します。
このように言ってしまうと、「生活保護の不正受給=悪質な詐欺」というイメージを持ってしまう人もいるかもしれません。
ですが、生活保護の不正受給が起きてしまう背景にはさまざまな理由があったのです。
生活保護の不正受給が起きてしまう理由
生活保護は不正受給とセットで考えられるような風潮がありますが、実際の不正受給の割合はそれほど多くはありません。
また、不正受給の中でも悪質なケースはごく一部で、ほとんどの場合が収入の申告漏れによるものです。
どうして生活保護の不正受給が起きてしまうのか、その理由をひとつひとつ見ていきましょう。
収入・年金の無申告や申告漏れ
生活保護の不正受給のうち、最も大きい割合を占めているのが収入や年金の無申告あるいは申告漏れです。
受給者が受け取る生活保護費は収入によって増減されるので、どんなに少ない金額でも収入があったら申告しなければなりません。
収入があったということや増えたということを申告しないで生活保護費を受け取ってしまうと、不正受給とみなされてしまうのです。
手続きに必要な事務作業ができない
生活保護を受ける受給者の多くは、高齢者や障害者のほかケガや病気を抱えている人です。
受給者であっても生活保護制度のことを詳しく知らないことが多く、年金や手当を申告するのを忘れることが多々あります。
また、生活保護の手続きに必要な事務作業が十分にできないことも考えられるでしょう。
そのため、申告する作業も含めた生活支援をケースワーカーに求めることになるのです。
ケースワーカーの対応不足
ケースワーカーは常に人手が不足している状態なので、受給者すべてに細やかな対応ができているとは言えません。
日々膨大な事務処理に忙しく、世帯の状況が変わったことや収入が増えたことなどに気づかない場合があります。
不正受給の多くは、受給者に代わって申告作業を行わなければならないケースワーカーの対応不足によって起こることもあるのです。
ケースワーカーとのコミュニケーション不足
生活保護の不正受給は、生活保護制度に対する受給者の認識不足から起こっている場合もあります。
そして、その認識不足はケースワーカーとのコミュニケーション不足から発生しているケースがほとんどです。
ケースワーカーから説明を受けていないために、そもそも申告が必要だと知らない受給者も多いといいます。
このように、生活保護の不正受給の大部分は行政の体制の不備から生み出されているのです。
悪質な不正受給の事例
生活保護の不正受給は、その多くが収入の申告漏れによるものです。
ですが、不正な手段を使って故意に生活保護費を受け取る悪質な不正受給が存在するというのも紛れもない事実なのです。
以下に悪質な不正受給の事例をまとめてみました。
暴力団員による不正受給
生活保護が受けられない暴力団員が身分を隠して生活保護費を不正に受給したとして、詐欺容疑で逮捕された事例があります。
この暴力団員は暴力団組織に所属しているつもりはなかったと容疑を否認しました。
ですが、実際には指定暴力団の組員であり、9ヶ月間にわたって約150万円の生活費を不正受給したとされています。
偽装離婚による不正受給
本当は離婚する気がないのに離婚届を提出し、世帯を分けることで生活保護費を受け取ろうとする不正受給の手口も増えています。
戸籍上ひとり親になることで生活保護の申請が通りやすくなり、児童手当や児童扶養手当を受け取ることもできるようになります。
どうせ発覚しないだろうという安易な気持ちで、偽装離婚による生活保護の不正受給を行う人が増えているといいます。
このようなケースは、福祉事務所の調査によって発覚することが多いようです。
生活保護ビジネス
受給者の生活保護費を不当に搾取する生活保護ビジネスも、不正受給の手口として社会問題になっています。
ホームレスなど身寄りのない生活困窮者に生活保護を受けさせ、生活の基盤を与える代わりに生活保護費を徴収するビジネスです。
生活の基盤と言っても受給者に与えられるのは劣悪な住環境と質素な食事だといいます。
違法性の高いビジネスであるにもかかわらず受給者が被害を訴えることがないため、明るみに出ることはほとんどないようです。
不正受給の罰則やリスク
生活保護費の不正受給が悪質な場合はもちろん罰則があります。
では、収入の申告漏れなどで不正受給に分類されてしまった場合は、罰則などのペナルティが発生するのでしょうか?
つぎは、生活保護を不正受給した場合の罰則やリスクについてお伝えします。
過失による不正受給の場合
生活保護費の不正受給は、生活保護制度に対する認識不足や収入の申告漏れなど、過失による場合がほとんどです。
生活保護費の受給が意図的な不正でない場合は、不正受給分を返還する必要がありますが罰則はありません。
悪質な不正受給の場合
一方で、生活保護費の受給が意図的な不正である場合は、不正受給分の返還と合わせて増額徴収が行われます。
さらにその不正が悪質なものだと判断された場合は、詐欺罪で警察に告訴されるケースもあります。
生活保護費を受給する場合の注意点
生活保護費を受給するときは、生活保護の不正受給に該当することのないように注意しなければなりません。
最後に、生活保護費を受給する場合の注意点をまとめます。
世帯全員の収入をすべて申告する
生活保護を受けている間は、世帯全員が得たすべての収入を申告しなければなりません。
収入には、世帯全員のボーナス分やアルバイトで得た就労収入も含まれるため、見落とさないように気をつけましょう。
たとえ少額の収入であっても申告漏れがあると不正受給に分類されてしまいます。
ボーナスやアルバイト代が支給されたら収入申告書に記入し、給与明細と一緒にケースワーカーに提出するようにしましょう。
給与以外の収入もすべて申告する
生活保護受給中に申告しなければならないのは給与だけではありません。
年金や各種手当、仕送りやネット収入など、ありとあらゆる収入をすべて申告する必要があります。
ひとつでも申告漏れがあった場合、不正受給とみなされてしまうので注意しましょう。
世帯員の構成が変わったら申告する
世帯員の構成や状況に変化があったことを届けず、その世帯員の分まで生活保護費を受け取っていた場合は不正受給になります。
つぎのような世帯員の変化があった場合は、必ず届け出るようにしましょう。
- 世帯員の転出・転入
- 世帯員の出産・死亡
- 世帯員の入院・退院
- 世帯員の入学・退学
- 世帯員の就職
- 世帯員の結婚
- 家族以外の同居
まとめ
生活保護費を受け取るときは、収入の申告をはじめ各種手続きをしっかり行い、不正受給にならないようにすることが大事です。
そのためには、生活保護受給者の正しい認識とケースワーカーの細やかな対応が求められるでしょう。