守秘義務(秘密保持義務)いう言葉に馴染みがあるでしょうか。
「知っている言葉だけれどあまりピンとこない」そう思う方もいらっしゃるでしょうか。
しかし私たちにとって、守秘義務は無視できないほど身近な存在なのです。
特に社会に出ている人は絶対におさえておきたい知識であるといえるでしょう。
サラリーマンはもちろん、フリーターなどアルバイトで生計を立てている人も含まれます。
守秘義務違反をするとどうなるのか、例とともにご紹介します。
ご自身が知らずに守秘義務違反をしないために、ぜひ参考にしてみてください。
守秘義務に違反した場合
専門的な職種の場合
ここでいう専門的な職種とは、弁護士・公務員・技術士・郵便局員・看護師・医師・薬剤師などをさします。
これらの職種は、各職業を規定している法律において守秘義務を遵守すべきと定められています。
各職業を規定している法律というのは、弁護士法や国家公務員法などのことです。
また、医師・薬剤師・医薬品販売業者・助産師・弁護士・弁護人・公証人の守秘義務については刑法でも規定されています。
違反すると6月以下の懲役または10万円以下の罰金が科せられるのです。
専門的な職業に携わる人々にとって、守秘義務は必ず守らなければならないものだということがわかります。
刑法134条(秘密漏示)第1項
「医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、・・・の職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。」
サラリーマン・アルバイトなどの場合
では、普通のサラリーマンやアルバイトなどは、守秘義務とは無縁なのでしょうか。
答えはノーです。サラリーマンやアルバイトも守秘義務を守らなければなりません。
根拠となる法律は労働契約法です。この法律は労働者が「信義に従い誠実」な姿勢をもって職務にあたることを定めています。
労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。
守秘義務違反をした場合「信義に従い誠実」な労働者ではなくなります。
これは、使用者に対して「義務を履行」することに反します。
ですので、サラリーマンやアルバイトでも守秘義務違反をすると損害賠償などが発生する場合もあるのです。
法的にも違反できない守秘義務ですが、モラルの面からも考えてみてください。
業務上知り得たことをよそで話す人がいたとします。
その人へのビジネスパーソンとしての信頼度は下がるのではないでしょうか。
モラルの面でも守秘義務を守らなければならないと、多くの人は自然に感じています。その気持ちを大切にしましょう。
守秘義務に違反しないための対策法
飲み会で会社の話はちょっと待って
特に新社会人に多いのですが、昔のクラスメイトなど会社外の人と飲み会をする場合です。
多くの人が近況について話しますから、自然と自分の業務について話したくなるでしょう。
酔って判断力も低下しているのもあり、話してしまったとします。
これは守秘義務違反です。仲間内だからいいだろうと思われるでしょうか。
しかし居酒屋などの開かれた場所での会話は意外な人が聞いていたりします。
個人情報など守秘義務にあたることをぺらぺらしゃべる人を不快に思い、会社に苦情が行くこともあるのです。
損害賠償に発展する場合もあります。そもそも話したのが仲間内であってもれっきとした守秘義務違反となります。
飲み会の前に会社の話をしないことをしっかり意識しておいてください。
SNSで発信する前にちょっと待って
ツイッターなどSNSに日々の出来事を投稿していたとします。
ある日、会社で芸能人Aさんの住所についての情報を得ました。
思わずそれを発信したとします。それは明確に守秘義務を違反したことになります。
ツイッターなどは軽い気持ちで投稿できてしまう分、ツイートボタンを押す前にちょっと立ち止まって考えてほしいのです。
芸能人の個人情報を知って興奮する気持ちはわかりますが、守秘義務のことを思い出して胸にしまっておいてください。
守秘義務違反で炎上することを防ぐことができます。
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会社での守秘義務の範囲
職務上知り得た情報・秘密
職務上知り得た情報や秘密は守秘義務の範囲となります。
これらは家族など身近な人にも話さないようにしましょう。
話した場合、子供がクラスメイトに広めてしまうなどということがありえるためです。
また、職務上知り得た情報の漏洩で、専門的な職種でなくとも刑法で裁かれてしまう場合があります。
それはインサイダー取引についての漏洩です。会社内部の重要な情報の漏洩は守秘義務違反ですし、そもそもインサイダー取引自体が違法です。
5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはその両方が科せられる可能性があります。
インサイダー取引規制に違反した場合の罰則は、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、または、これらの併科です。
儲かるかもしれないと思っても絶対に行わないようにしましょう。刑罰はこのように大変重いものです。
就業規則を守る
就業規則には必ず目を通しましょう。
在職中は当然のことながら退職後も守秘義務が課されるなど、知らなかったでは済まない情報がたくさん記載されています。
就業規則で守秘義務について定めている場合は多いです。
どのような場合が違反で損害賠償が発生するのかなど、自分の身を守るためにも必ず把握しておいてください。
入社時に誓約書にサインした覚えがある方もいらっしゃるでしょう。
その時点で就業規則に同意していることになるので、繰り返しますが「知らなかった」は通用しないのです。
守秘義務違反の事例
企業Aに勤めていたB氏は、早期退職し同業他社へ転職しようとしました。
それを知った企業Aは営業秘密漏洩としてB氏を懲戒解雇します。
B氏はこれに納得がいかず、懲戒解雇の取り消しを訴えたのです。
しかし、B氏はすでに転職先の会社に企業Aの資料を持ち込んでおり、守秘義務違反とされました。
裁判所はB氏の請求を棄却し、懲戒解雇を正当なものと判断したという事例です。
守秘義務契約書の注意点
どこからどこまでが範囲か
入社時などに守秘義務契約書(秘密保持契約書)を交わす場合があります。
その際注意して見ていくところをご紹介しましょう。
まず、どこからどこまでが守秘義務の範囲なのかを具体的に確認してください。
特に口頭で告げられた情報に関してどうするかは、後のトラブルを防ぐために会社側がしっかりと文字にして定義する必要があります。
何が守秘義務から除外されているのかも確認しましょう。
特に、行政機関に対する秘密情報の開示が除外されるのかどうかを注意して見ます。
なぜかというと行政機関から秘密情報の開示を求められる可能性があるからです。
情報の使用目的・管理方法など
次に、情報の使用目的を確認します。秘密情報の管理方法・返還・廃棄・消去についての記載にもしっかり目を通しましょう。
守秘義務違反をした場合の損害賠償についても改めて規定されていることが多いです。
契約書の内容をきちんと把握することは、自分の身を守ることにもつながります。
ですので、ただ目を通すだけでなくひとつずつ確認しましょう。疑問に思うことは、些細なことでも質問しましょう。
まとめ
守秘義務に違反した場合の罰則や事例などをみてきました。
守秘義務は専門的な職種だけの話だと思っていた方は認識を改めてください。
普通のサラリーマンやアルバイトにも守秘義務は少なからず関わっています。
また、普段気をつけているつもりでも飲み会やSNSの投稿などでうっかり守秘義務違反をしてしまうケースもありえます。
日頃から、守秘義務について高い意識を持ちつつ仕事に取り組んでください。
契約書を交わす場合は必ずしっかりと読み込み会社の守秘義務について深く理解しましょう。
社会人としてふさわしい言動を心がけてください。守秘義務違反とは無縁でいられることでしょう。
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