「育児放棄って言葉は知っているけど他人事」果たして本当にそうでしょうか。
育児放棄を未然に防ぐためには、私たちの行動が大きく関わってくるのです。育児放棄についてひとつずつみていきましょう。
育児放棄は虐待なのか
育児放棄は虐待です
児童虐待は4つの種類に分けられます。身体的虐待・精神的虐待・心理的虐待そして育児放棄ことネグレクトです。
つまり、育児放棄は虐待の1つとしてカテゴライズされている行為なのです。
「他の3つの虐待のように子どもに怪我をさせたり暴言を吐いてショックを与えているわけじゃない」
そう考える人もいるでしょうか。しかし、育児放棄のように保護者がその責任を果たしていない行為はれっきとした虐待であるといえます。
保護者から食事を与えられない・放置されるということは、子どもにとって計り知れないショックを与えるのです。
積極的ネグレクト・消極的ネグレクト
育児放棄は積極的ネグレクトと消極的ネグレクトに分けられます。
積極的ネグレクトは、経済的な事情などを鑑みても子どもをきちんと保護できる状態にあるにも関わらず育児放棄することです。
消極的ネグレクトは、貧困や子どもの育て方の分からなさから保護者が子どもを保護できる状態でなく育児放棄してしまう状態のことをいいます。
消極的ネグレクトの場合は、保護者や家庭を社会が支援することで育児の手助けをし、改善できるケースもあります。
もちろん積極的ネグレクトにも社会の介入が必要です。
年々増加する育児放棄
育児放棄含む児童虐待の件数は、毎年右肩上がりで増加しています。
昔と比べて「それぞれの家庭の問題だから」と見て見ぬふりをする人が減り通告が増えたという背景もあります。
しかし、それを踏まえても虐待の相談件数は純粋に増加しているといえます。
もちろん育児放棄も増加しています。心理的虐待・身体的虐待についで3番目に多いのが育児放棄です。
育児放棄の割合は4番目の性的虐待と比べると数倍以上の多さであるといえます。
育児放棄の理由
子供を受け入れられない親
当然ながら世の中には多種多様な家庭があります。
子連れの再婚をした家庭、障害児が生まれた家庭など事情は様々です。
その事情により自分の子どもを受け入れることができず、現実逃避的に育児放棄をしてしまうケースがあります。
保護者は、子どもがまるで自分の子どもではないように感じてしまいます。
たとえば子連れの再婚をした場合は、再婚相手の子どもを愛せず育児放棄してしまったというケースもあります。
ちなみに、自分が虐待を受けて育った親は子どもに対しても虐待をしてしまうケースが多いです。
子育ての知識のない親
保護者が子どもをどう育てていのか分からず育児放棄してしまうケースもあります。
母親などが育児をする際、知識は必要です。「おむつの変え方がわからない」
「夜泣きへの対処がわからない」「体調が悪そうだけれど病院に連れて行くべきかわからない」
この保護者の「わからない」は「放置してしまえ」につながり育児放棄の原因になります。
保護者への周りの支援が必要であることがわかるケースです。
育てにくさのある子供
障害児や未熟児など、保護者にとって「育てにくい」と感じる子どもは育児放棄されるリスクが高まります。
上記の「子どもが受け入れられない」「知識がない」という項目がどちらも該当しているケースであるといえます。
「自分の子どもが障害児だなんて受け入れられない」「障害児は特別だから育て方がわからない」
そのように考え、保護者は精神面で非常に疲弊してしまいます。
保護者が家庭の中だけで抱え込むには重すぎる問題です。
育児放棄を未然に防ぐ対策法
近所との繋がりを大切にして
育児放棄の理由を見ていると、育児放棄をしている保護者には様々な支援が必要であると分かります。
もちろん公的な支援は必要ですが、大きな力になるのはご近所さんの存在です。
「あの家庭は何かおかしい」と通告するのはご近所さんが多いです。
つまり、ご近所さんが育児放棄はじめ虐待に気づく・未然に防ぐストッパーの役割を果たすといえます。
ご近所に育児をしている家庭があるでしょうか。そのような家庭との繋がりを大切にしてください。
信頼関係を築くことによって困っている保護者の相談に乗ってあげられます。
育児の「わからない」について教えてあげることもできます。
教える自信がないと思っても「一緒に考えてくれた」というだけで、困っている保護者は精神的に救われます。
周りのSOSに敏感になり、困っている家が孤立しないように気を配りましょう。
子供が出すサインに敏感になって
「あの子どもはいつも同じ服を着ている」
「平日の昼間なのに外で遊んでいる。学校に行っていないのでは?」
「小さいのにいつも遅くまで外で遊んでいる」
子どもは自分で「育児放棄されている」と言わなくとも、見た目や行動で私たちにサインを出しています。
育児放棄状態に陥りかけている家庭の子供である可能性があります。
それを敏感に察知して、深刻な育児放棄に悪化してしまうことを防ぎましょう。
私たちの通告が、子どもたちの危機を救う手助けになります。
育児放棄が子供に及ぼす影響
精神的な影響
「自分は親にとって大切な存在じゃない」
育児放棄された子どもはそのように考え、いつしか「自分は存在する価値がない」という思いを抱くケースもあります。
ですので、育児放棄された子どもは自己肯定感がかなり低い傾向にあるのです。
母親など保護者が子どもに愛着を抱けないということは、子どもの人生に暗い影を落とします。
保護者と基本的な信頼関係を築くことは、人にとってその後の人間関係の基盤になります。
その基盤がしっかりできていないと、人間関係に困難さを覚える場合が多いのです。
また、育児放棄により教育の機会を奪われると勉強についていけなくなりさらに自信がもてなくなります。
育児放棄された子どもは様々な困難を抱えて生きていくことになります。
身体的な影響
育児放棄された子どもは食べ物を満足に与えられていない場合があります。
また、愛情をかけられないで育つということは、成長ホルモンが抑制され身体的な発育に悪影響を及ぼすのです。
ですので、育児放棄されている子どもは同じ年頃の子どもと比べて身体的に幼いといえます。
平均と比べて極端に発育の遅れがみられる場合は育児放棄を疑うべきでしょう。
また保護者が病院に連れて行かないことにより、子どもの病気や怪我が悪化するケースもあります。
手遅れになる前に周りの大人がサポートする必要があるのです。
育児放棄が疑われる際の通報先
「あの家庭は少し様子がおかしい」「もしかしたら育児放棄じゃないか」
その場合すぐに全国の児童相談所の共通ダイヤルである189に電話をしてください。
「いちはやく」と覚えておくとよいでしょう。「虐待であるとはっきりわかってから通告しよう」とは思わないでください。
少しでも可能性があればすぐに通告します。もしも通告の結果、虐待でなかったとしてもペナルティやデメリットは全くありません。
むしろ虐待する寸前まで困りごとを抱えていた保護者には行政の救いの手が伸び、虐待を防ぐ結果にもなりうるのです。
「あれ?」と思ったらすぐに通告しましょう。私たちの通告が子どもたちや保護者を救います。
まとめ
育児放棄の基本や理由・未然に防ぐ方法・子どもに及ぼす影響や通報先をみてきました。
育児放棄を防ぐためには、困りごとを抱えている家庭を孤立させないことが大切です。
そして、少しでも疑わしい家庭は迅速に通告してください。
私たちの力で育児放棄から子どもたちを守りましょう。