声紋認証システムというものをご存じでしょうか。名前の通り、声を使って個人を特定する生体認証システムです。
近年開発・研究が急速に進み、企業を中心に導入が進んでいます。
声紋認証システムには防犯面の強化はもちろん、暮らしを豊かにするメリットが満載です。
今回はそんな声紋認証システムについて解説していきます。
声紋認証システムとは?
私たちは普段、Webサービスやロックの解除にIDやパスワードを入力します。
声紋認証システムにおいて、そのIDやパスワードにあたるのが声です。
一定の秒数発声することで個人を判別したり、特定のワードを口に出して認識したりします。
声の照合は身体的特徴と行動的特徴の2項目によって行われます。
身体的特徴とは、声を発する声道の長さや太さのことです。
行動的特徴は発音やアクセント、スピードといった話し方の癖にあたります。
複数の特徴を抽出するため精度が高く、なりすましなどができない生体認証システムとして、近年注目度が高まっているのです。
声紋認証システムのメリット
ローコストで導入できる
声紋認証システムの大きな特徴にローコストで導入できるというものがあります。
なぜなら声紋認証システムの多くが、ソフトウェアやアプリで展開していて特別な装置の設置がいらないためです。
例えば指紋認証の場合は、指紋を読み取るための機械が必要になります。しかし声紋認証システムはそうした機械なしに本人確認ができるのです。
ほとんどのシステムが、スマホなどのマイクから拾う音声に対応しているのも強みです。
簡単に認証できる
現在の声紋認証システムは、0.5秒から3秒で本人確認ができるといわれています。
確認ができるまでの間は、声を出しているだけで良いのです。
スマホやパソコンでIDとパスワードを打ち込むことに比べれば、とても簡単な本人確認の方法といえるでしょう。
パスワードなどを覚えたり、定期的に変更したりする手間もかかりません。
セキュリティ精度が高い
手軽な点は魅力ですが、気になるのはセキュリティの精度です。
一般的に生体認証システムは、IDとパスワードによる本人確認よりもセキュリティ精度が高いといわれています。
なぜなら生体認証に用いられる虹彩や指紋、声紋などは人によって全く異なるためです。
経年によって変化したり、誰かに再現されたりすることもありません。
声紋認証システムの精度は90%から99%といわれています。
中には一卵性双生児の声を判別することができたという検証結果もあります。
雑音のある環境でも本人確認ができるという報告もあるため、認証の精度はかなり高いといえるでしょう。
高確率で個人の特定ができて盗用やなりすましのリスクも少ないことから、セキュリティ精度も申し分ありません。
NEC は、特定フレーズに依存しない非定型の音声データを用いるテキスト独立方式における声認証技術を強化し、認証時間を10秒から5秒に半減、認識精度を90%から95%に向上させました。
心理状況の把握も可能
声紋認証システム固有の特徴として心理状況が把握できることが挙げられます。
データベースに登録された平常時の声を元に、話し方などから異常を検出することができるのです。
例えば脅されている状況下で話していることが分かれば、犯罪を未然に防ぐことに繋がります。
またうつ病をはじめとする精神疾患の発見・治療への活用も期待されています。
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声紋認証システムの導入事例
金融機関でのセキュリティ強化
声紋認証システムは企業を中心に世界中で導入が進んでいます。最近盛んに導入されているのが金融分野です。
イギリスの銀行では声紋認証システムを導入し、詐欺電話の識別に活用しています。
声紋認証システムの導入によって、日本円にして430億円もの金額を詐欺から守ることができたという報告も上がっています。
HSBCはこの「Voice ID」がいかに同社にとって有効なものなのか、成果について発表している。それによれば、16年から19年4月までに、英国だけで1万5000件以上の詐欺電話が確認されている。こうした企てを察知して詐欺を防いだことで、同社は3億3000万ポンド(約430億円)以上を守ることができたという。
日本では、2017年に鹿児島銀行が国内で初めてインターネットバンキングのログインに声紋認証を導入しました。
セキュリティ強化や、ネットバンキングの利便性の向上といった成果が得られています。
JCBでの検証
日本の大手クレジットカード会社「JCB」でも、試験的に声紋認証システムが導入されています。
JCBが声紋認証システムを導入したのはコールセンターです。電話口で声紋認証を行い、顧客情報の確認作業を省略するという検証が行われています。
従来はカード番号や本人確認事項を口頭でヒアリングした後に、問い合わせ内容を聞くという手順でした。
声紋認証を行うことによって本人確認の時間短縮に繋がります。さらに個人情報を口頭で伝える必要がなくなることから、防犯面の強化も期待できます。
スマートスピーカーへの導入
最近身近になってきたのがスマートスピーカーです。AIが利用者の声に反応して、オーダーを聞いてくれる便利な家電として人気が高まっています。
そんなスマートスピーカの人気機種「Google HOME」にも声紋認証の技術が運用されています。
「Voice Match」という、ユーザーを6人まで登録できる機能です。
Google Home アプリで 1 つの家ごとに最大 6 人のユーザーが Voice Match をオンにできます。
引用:Voice Match を使用して Google アシスタントに自分の声を認識させる|Google アシスタント ヘルプ
Google HOMEに話しかけると登録された声を元にユーザーを特定し、その人に合ったスケジュールや再生リストを提案してくれるのです。
登録されたユーザー以外のオーダーは実行しないように設定できるため、セキュリティ強化にも繋がります。
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API・アプリへの導入例
セキュリティ精度が高く利便性も高まることから、声紋認証は私たちの身近なところでも導入が進んでいます。
そこでここからは、声紋認証の技術を活用したAPIやアプリをご紹介します。
NECのソフトウェア
日本の大手IT会社「NEC」は、モバイルサービスで安全に生体認証を導入できるAPIソフトウェアを開発しました。
ソフトウェアの基本機能は、ユーザーのIDやパスワードといった情報の管理と認証です。
従来はIDやパスワードとなどの文字や記号の管理だけだったものが、生体認証にも対応しているのがNECのソフトウェアのポイントです。
NECのソフトウェアを導入したサービスでは、指紋や顔、そして声紋での照合が可能になります。
生体情報を外部端末に送信しないで本人確認を行う機能が搭載されているので、個人情報の流出対策にも有効だといわれています。
「KOEPASS」
スマホのアプリにも声紋認証システムが活用されています。
「KOEPASS」は声をパスワードにしたサービスです。
特にチケットの転売防止に特化したアプリで、チケットを買った本人かどうかを声によって判別します。
購入時に声を登録することによって、チケットを買った本人にしか使えなくなるのです。
1人で購入できるチケットの枚数を制限する機能もあります。
またKOEPASSからイベント情報や会場へのアクセス方法なども知ることもできます。
今後はイベントチケットだけでなく、企業の入退室や特定クーポンの配信などにも応用される見込みです。
声紋認証システムの活用方法
スマホやパソコンのロックに活用
アプリなどを使えば、声紋認証は個人単位で導入することができるようになっています。
有効な活用方法として挙げられるのが、ロックシステムとしての利用です。
マスクをしていたり、手が汚れていたりしても声紋認証なら問題なくロックを解除することができます。
パソコンのパスワードを打ち込む手間もいりません。
特定のワードを設定することで、勝手にロックが解けてしまうリスクも回避できます。
ハッキング防止に活用
IDやパスワードの弱点はハッキングによって暴かれてしまうことです。
しかし声紋認証であれば、ハッキングを受けてもロックが解けることはありません。
なぜなら、ハッキングでは生体情報を奪って入力することができないからです。
こうした点から、ハッキング対策としての活用もおすすめです。
ID・パスワードと並行して生体認証システムを導入する二重ロックが確実だといわれています。
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声紋認証システムの今後に期待!
声紋認証システムは、まだまだ開発段階にある分野です。しかし確実に成果を出し、私たちの生活に組み込まれてきています。
防犯性を高めつつ利便性も損なわない声紋認証に、今後ますます注目が集まるでしょう。
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