皆さんは地面師という言葉をご存知でしょうか?
この言葉は、とある詐欺を行う人物を指しており、現代でも一定数の被害を出しているものです。
今回はそんな地面師の手口や騙されないための対策法を紹介していきます。
地面師とは?
地面師は簡単に言うと、土地の所有者になりすまして不動産取引や借入で不当にお金を騙し取る詐欺のことです。
その始まりは第二次世界大戦後からであり、バブルの時代に土地の価格が上がったことで地面師は増加します。
当時は土地に関する情報が紙媒体であったことや戦時直後はそのような詐欺の管理まで手が回らず詐欺が横行したのです。
ただ、時代が進むにつれて土地に関する書類がデータ管理されることで地面師の数は減少することになります。
近年では東京オリンピックの開催から都内の土地の価格が上がったことで、この詐欺行為を狙う者がまた出てきいるようです。
地面師が詐欺に使う手口・特徴
地面師の被害に遭わないためには詐欺のやり方を知っておかなければいけません。
ここでは地面師が詐欺をする上での役割や対象などの手口や特徴を見ていきます。
地面師にあたる人物
地面師は他の詐欺師と同じように単独で活動することもあればグループで活動することもあります。
買取相手と面と向かって話す所有者のフリをする人だけでなく、仲介人や不動産業者のフリをする人もいるものです。
更には法律に明るい司法書士や弁護士までも地面師のグループである可能性が場合によってはあります。
このように複数人で活動していると、どこまでが地面師のグループか判断ができないものです。
このグループの特徴を活かして実際の取引を行っていた者以外は関与を認めないことで罪に問えないこともあります。
地面師が詐欺に使う物
地面師が詐欺に使うのは本来所有していない偽の土地の権利証はもちろんのこと、買取相手を信用させるための情報も多用されます。
運転免許証など身分を証明するものや公的書類を偽造して用意することで取引が本物であるように見せかけるのです。
また、先の項目で時代の変化によって地面師が詐欺をしづらくなったと書きましたが、反対に有利になった面も存在します。
それは詐欺に必要な資料がパソコンや3Dプリンター等で簡単に偽造しやすくなったことです。
情報を守る技術が上がったことは確かですが、騙す技術も上がったことも土地の売買を行う際には覚えておかなければいけません。
詐欺の対象となる者
地面師が詐欺の対象とするのは個人から企業まで幅広いものです。
個人の場合は土地の売買だけでなく、持っている空き地を勝手に売られる被害もあり得ます。
土地を勝手に売られると、例え詐欺被害であってもその所有権を取り戻すのに苦労するものです。
また、グループで行動されると大きな企業や本物の弁護士でも地面師の詐欺に気付けないことがあります。
実際の詐欺のやり方
地面師が詐欺を行うのは表面上では普通の不動産取引と何ら変わらないものです。
騙す相手に対して用意した資料で信用させて、土地の買い取らせたり、借りさせたりします。
また、売るための土地の情報を収集するため土地の持ち主に対しても一般の不動産屋のように近づくことがあります。
偽の不動産屋との会話の中で権利証の情報や個人情報を聞き出し、偽造に活かすのです。
どちらも本当の話し合いと見分けがつかないので、相手が地面師かどうかの判断は雰囲気が怪しいなどの要素でしか判断できません。
地面師が関わった事件
ここでは実際に起こった地面師による事件について見ていきます。
積水ハウスの事件(2017年)
地面師が関わった事件として最も大きなものは2017年に判明した積水ハウスの被害です。
この事件で積水ハウスは地面師のグループによる詐欺によって55億円以上のお金を騙し取られています。
手口としては偽装書類となりすましというシンプルなものです。
しかし、大手メーカーである積水ハウスも被害が出てから気付いたことからこの手口が容易に看破できないことが窺えます。
また、地面師にグループで行動されることの恐ろしさを感じるものです。
この事件において面会して取引を行っていた者は逮捕後の2020年の6月に懲役11年の判決を言い渡されています。
弁護士による事件(2019年)
こちらの事件も偽造した委任状を不動産会社に売却し不正にお金を得たというもので、内容自体は先ほどと大きく変わりません。
注目すべきは、こちらの事件で逮捕された5人のうちの1人が詐欺を行っていた当時に弁護士だったのです。
地面師のグループが詐欺を行う時はその弁護士事務所で取引を行っていました。
このように現役の弁護士や司法書士でも詐欺へ協力していた事例はいくかあります。
地面師における弁護士や司法書士はなりすましだけでなく、本物やその知識を持った人も存在するのです。
地面師の被害に遭わないようにするための対策
グループや本物の弁護士まで関わる地面師ですが、その被害に遭わないためにはどうすれば良いのでしょうか?
ここでは地面師の詐欺に遭わないための対策を見ていきます。
取引の際は信頼できる不動産屋や弁護士を間に挟む
地面師は不動産屋や弁護士、司法書士の中にも潜んでいることがあります。
そんな中で取引をしに来た怪しい相手から紹介される人物は例えどんな肩書があっても信用できないものです。
間に挟まる人物に相手の意図が入らないよう不動産屋や弁護士はなるべく自分が信頼して選んだ人を頼るようにしましょう。
権利証や個人情報などを簡単に提示しない
土地の権利証や免許証などの個人情報は相手に見せない限りはそう簡単に偽装されないものです。
しかし、地面師は取引の中でそれらの情報を言葉巧みに引き出そうとしてきます。
それらの情報が一つでも相手に渡ってしまうと何かしらに悪用されてしまうものです。
なので、相手が信頼たる人物とわかって本格的な取引に進むまでは小さな情報でも提示しないようにしましょう。
不正な登記に対する対策
近年は不動産登記法の改定によって、「登記識別情報」という12桁の番号が権利証の代わりに発行されるようになっています。
この登記識別情報があれば権利証がなくても所有権の移転など権利証できることを代わりに行えるのです。
そして、この番号は手続きを踏むことで失効させられるので、もし番号がどこかに漏れてしまった場合は対策できます。
番号で保管することで偽造を防ぎつつ、漏れてしまった場合も対策できることを覚えておきましょう。
地面師の詐欺に巻き込まれた場合の相談先
もし地面師の詐欺に遭ったり、勝手に土地を売られたりした場合はどこに相談するのが正解なのでしょうか?
地面師を専門に取り扱っているところはありませんが、主に以下の相談先が挙げられます。
- 国民生活センター(消費者生活センター)……#118
- 弁護士事務所……各事務所による
消費者として関わることであれば国民生活センターへ電話をすると、然るべき対応法や専門の窓口に案内して貰えます。
また、信用できる弁護士であれば地面師に関する事件も取り扱ってくれるものです。
大手の弁護士事務所など実績のあるところに相談してみましょう。
まとめ
今回は地面師に関する情報についてまとめていきました。
グループで活動することもある地面師は取引の中でどこに潜んでいるか判断が難しいものです。
また、空いている土地を持っている人は対策をしておかないと勝手に土地を売られる可能性があります。
騙されないようにするためにも土地の売買は慎重に行うと同時に信頼できる人物を間に挟むようにしましょう。